骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2009-05-22 10:00


不破大輔インタビュー:「お正月みたいなものなんですよね」 ―渋さ知らズ・結成20周年記念ツアー開幕!

渋さ知らズが作り出す祝祭的ダンスミュージックには観客を参加させ踊らせるパワーがある。観るだけではつまらない!踊るしかない!
不破大輔インタビュー:「お正月みたいなものなんですよね」 ―渋さ知らズ・結成20周年記念ツアー開幕!

ジャズをベースにロック、ファンク、ワールドミュージックを飲み込んだ祝祭的ダンスミュージックで聴衆を引きずり込む『渋さ知らズ』。圧倒的なパフォーマンスで音楽ファンだけでなく、演劇や舞踏・ダンス・美術ファンまで世界中の多種多様な人々を魅了し続けてきたカテゴリー不可な音楽集団も今年で20年目に突入した。ツアーは名古屋を皮切りに大阪、広島、5月28日の東京が最終日となる。
ダンドリストとして『渋さ知らズ』を指揮する不破大輔さんに話を聞いた。


特別な感慨は何も無い

── 渋さ知らズ、結成20周年を迎えた今の心境は?

何も無いです(笑)。ちょうど30歳の時から始めた訳ですが…子供の頃は一日がとっても長かったのに対して、歳をとるとどんどん時間の感覚が早くなって1年のサイクルが短くなっていく。あっという間で別に感慨というよりは…このまま行けば、もうあっという間に死んでしまえるのか私は…みたいな感じですね(笑)。気がついたらお墓の中というような。
そもそもバンドをやろうと思って渋さ知らズを結成したわけではなく(1989年劇中音楽を担当したのがきっかけで結成)、仲間と集まって花見や忘年会とかそういう集まりで始まったようなものなんですよ(笑)。そんな感じだから、続けるための努力というのはたぶん何にもしないでも済んでいるし(笑)。そのうちに自前でテントでも立てて、みんなでヨーロッパでも旅行しようかと、いろんな事が重なってあっという間に今まで来たという事です。

── 20年続けてきた中でバンドが変化した事、変化しない事は?

始めの頃のメンバーは一緒にいた仲間達も多かったし、先輩と後輩が同じ数くらいだった。今はほとんどが年下になっちゃうんですよね。それは自分にとっては“変わってきたな”というのはあります。
それはもう何十人の数が集まっているから、色々な人達がいて、色々な事がありました。飛行機の中で喧嘩している連中がいて、モスクワ空港で降ろして警察に引き渡すなんてことも(笑)。もう死んじゃった奴とか。でもみなさん結構大人だし、目の前の楽しいことを優先する人達なので、あんまりマイナスの感情に引きずられて今までやってきている感じはないんです。いくら酒を飲んだって、ライブでは全然違うテンションでプレイ出来る人達なんですよ。
現場の事でいえば、ずっと繰り返してきて “こういうのは飽きたからもう止めよう” みたいのはありますね。義務感を持ってやっていたり。まぁ近頃は“義務感もいいじゃん”と思ったりもしますが(笑)。
それこそ色々な現場があるんです。先日も宮城県の「ARABAKIロックフェス」では、土砂降りの雨で気温が8℃位なんですよ。これはもう息をつく間もなく身体動かしていた方がいいよねということで、ずっとガチャガチャ演奏してました。その時の現場で状況に合わせてやり方を変えていくという様な事はずっと変わっていないですね。

── 人数が増え続けてますが、メンバーはどのように見つけてくるんですか?

見つけたり見つけられたりなんですけど、例えば、ここの「なってるハウス」店長の広沢リマ哲さん(当日は、広沢リマ哲を加えた「リマ渋」のライブ)は僕がライブハウスで面白いと思って誘いました。それと片山広明さんの時の様に一緒にセッションして“これは何か一緒にやりたい”と思って加わってもらったり。後はミュージシャンの仲間達が“こいつは渋さ向きだよ”ということでリクルートしてくる場合とか。自分からやりたいと言って続いている人はあまりいなかったりしますね、なぜかね(笑)。面白かったのは、ピアニストの渋谷毅さんが片山さんと打ち合わせのついでに僕らが出演するライブハウスに来てて、渋さの演奏中にキーボード奏者を押しのけて弾いていた。その一週間後の旅には“僕、行くからね”って。それからずっと来ちゃったって人なんですね(笑)。

natteruLive
写真:「リマ渋」左から広沢リマ哲/磯部潤/不破大輔/立花秀輝(2009年5月2日「なってるハウス」にて)

女の子達のダンサーは、渋さのライブ2回目位からいました。あと、フェダイン(不破在籍のフリージャズトリオ。2000年末に解散)のスタッフだった人がその後、『駱駝艦』に在籍して“踊らせてくれ”と…そんな感じで仲間内で色々な人を誘って徐々に今の形になったという感じ。技術的な所や感覚的に似ている所がやりやすいんだろうなって思います。それと「お調子組合」というのは渋さで作った感じです、あのバナナ振っている人たちです(笑)。


自分が見たいものを一番いい席で見ている

── ダンドリストとして渋さをまとめているわけですが…

あんまりまとめていないんですけどね(笑)。

── ダンドリストは他のメンバーとは全く違う感覚で全体を見ていると思うんですけども、曲を作ってメンバーに伝えていく所も含めて、その面白いところ、苦労するところは?

曲は、それぞれメンバーが作った数曲と、あとは時々やるロックやジャズのスタンダードナンバー以外は僕の曲です。これはほとんどアングラ芝居の公演ために作ったものです。なぜか僕の関わる芝居はスペクタルというか、過酷な所ばっかりでやるイベントやお芝居が多いので、自然とドカーンというダイナミックなものが多くなって。渋さの人数が多いのもあって、何かそういうのがマッチしているのかな。人によってはそういうのが趣味に合わなくて嫌だという人ももちろんいるとは思うんですけども。それでもそういう曲を多く作ってますね。
やっぱり渋さというのはオーケストラであって、僕が指揮でもない人生を棒に振っているような気がするんですけども(笑)。見た目にはバンドを仕切っているように見えるとは思うのですが、仕切っているというよりは、自分が見たいものを一番いい席で見ているという感じなんです。
エンターテイメントとしてどうした方がいいというよりは、見たいという方を優先しているんです。例えば完全にお客さんとして見ていれば、プレイヤーがソロ弾いてて “もっと聴きたい!まだいけるだろー!”と思っている時に終わったりするのは嫌じゃないですか。“ちょっとこれ退屈だから聴きたくないな”みたいのもあったりするわけじゃないですか。そういうのを指揮しながら切り替えたりしてる感じですかね。

fuwadaisaku

ずっと「インデペンデント」でございます。

── エイベックスと契約されましたね。“エイベックス”なんて名前が付いてくると、なんか『渋さ知らズ』が変わっていくのかなと思ったりしたのですが。

いえいえ、ずっと「インデペンデント」でございます(笑)。未だに制作は自分達でやっています。エイベックスとは一枚毎の契約でアーティスト契約ではないんです。たぶんエイベックスにしてもこんなバンドと契約していたら、やばいと感じてるんだと思います。僕もまさかエイベックスから出す事になるとは全然思っていませんでしたよ(笑)。
去年トヨタで『渚の男』(『渋全』収録)という曲が流れていたんですが、SMAPの草彅君が話題になったように“コマーシャルが流れている間は、マイナスな事で話題になるようなことは謹むような運営をしていただかないと困る”という感じで言われて。そんなこと言われたって困ると(笑)。あの時ちょっとだけ「この野郎!」みたいな気になりました。「知ってんだろう、こっちがどんなバンドかはよぉ!」って(笑)。あと“ステージで裸になるのは止めて下さい”と言われて「ばか言ってんじゃないよ!」っていうのがありましたね。
でも“ステージの上であんまり酔っ払わないように”って言われたときは、「あっごめんなさい」って、思いましたけど(笑)。
前にエイベックスは「URC」(1969年フォーク全盛時に発足したインディーズレコード会社)の全部の権利を買ったんですよ。それで当時エイベックスにいた人から「URC」の中の曲をやってくれと。それで、高田渡さんの『自衛隊に入ろう』という曲をレコーディングしたことがあるんです。その直後に湾岸戦争があって、そしたら“あれ、ちょっと無かったことに…”みたいに言われて。あの時はホントに頭にきた(笑)。それでもう絶対に大手レコード会社とは一生縁が無いだろうなとは思っていたんです。だけど、たまたまライジングサンロックフェスティバルを見たエイベックスの人がどうしてもレコード出したいと言うんで、それでこっちも、好かれちゃうと“はいはい”なんて(笑)。それでエイベックスとの関係が始まったんです。

20周年は正月みたいなもの

── 不破さんはこれから『渋さ知らズ』でどんなことに挑戦したいですか?

「挑戦したい」と気が付いたことに挑戦したいですけど(笑)。出来ない事だらけなので何から手をつけていいのか分からなかったりもしますが(笑)。出来ないことをね、やりたいものですよね。まだまだ、もっともっとという形ですね。

──  『渋響』(エイベックスでの2枚目)なんかはレコーディンングのレベルとしては今まで出来なかったクオリティのものですよね。

いや、やっぱり違いますよね。だってあれ、ものすごい予算かけたと思いますよ。『渋栗』(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズ)もいいけど、あれも宣伝してくださいね(笑)。プロデューサーとエンジニアの方が面白がって、今まで見たこともないような機材を持ってきて。僕、そんなに機材について詳しい事は知らないんですけど(笑)。もちろんコンソールも最新鋭でマイクもものすごいものばっかりなんですが。あれはもう経験がなかったもので。それも、あんなに広いスタジオで。いつも地下室のようなスタジオでやってますから。その何十倍か何百倍かの予算ですからね。音はね、やっぱり違いますよね。

shib_jacket
写真左:『渋響』 写真左:『渋栗』

── 最後に20周年記念ライブについてお聞かせください。

もう今年やるのは全部、それもこれもすべてが20周年記念のライブですね(笑)。
やっぱり水商売で興行を生業としてますので、出来るだけ多くの人に来ていただけた方がお正月を迎えるのに年越しのお餅代で、っていったい何の話をしているのかな俺は(笑)。

(2009年5月2日 入谷:なってるハウスにて)


■不破大輔(ふわ・だいすけ) PROFILE

'59年札幌生まれ。'80年代から'90年代にかけて、「のなか悟空&人間国宝」、田口トモロヲの「ばちかぶり」の前身バンド『ガガーリン』、「近藤直司トリオ」「フェダイン」にベーシストとして参加し、レコードを2作、CD 4作のアルバムを残す。いずれも前衛ジャズシーンでは大きな話題を集め好評を得た。'89年に劇団「発見の会」公演「リズム」の劇伴を契機に渋さ知らズを結成し、代表作である『渋旗』『渋星』、など地底レコードから8枚、エイベックス・イオから『ベスト』と『渋響』の2枚を発表。現在までに計10枚のアルバムを発表している。また現在も「川下直広トリオ」「片山広明カルテット」で、ベーシストとしての演奏活動も並行して続けている。初のソロアルバムは、2001年発売の「28 TWENTY EIGHT」B20F。
渋さ知らズ! 公式サイト


渋さ知らズ20周年記念ツアー
「渋さ矩阿都路ヲ跳舞ノ編 ~shibusa quattoro wo tobu no hen~」

名古屋CLUB QUATTORO

2009年5月21日(木)

開場18:00/開演19:00
前売料金:¥4,000(税込・ドリンク代別途¥500)
チケット取扱:
ぴあ/TEL:0570-02-9999(Pコード:317-647)
ローソン/TEL:0570-084-004(Lコード:43742)
e+
問合せ:名古屋CLUB QUATTORO TEL:052-264-8211

心斎橋CLUB QUATTORO

2009年5月22日(金)

開場18:00/開演19:00
前売料金:¥4,000(税込・ドリンク代別途¥500)
チケット取扱:
ぴあ/TEL:0570-02-9999(Pコード:318-309)
ローソン/TEL:0570-084-005(Lコード:54855)
e+
問合せ:心斎橋CLUB QUATTORO TEL:06-6281-8181

広島CLUB QUATTORO

2009年5月24日(日)

開場18:00/開演19:00
前売料金:¥4,000(税込・ドリンク代別途¥500)
チケット取扱:
ぴあ/TEL:0570-02-9999(Pコード:317-719)
ローソン/TEL:0570-084-006(Lコード:63414)
e+
デオデオ本店プレイガイド/タワーレコード広島店
問合せ:広島CLUB QUATTORO TEL:082-542-2280

渋谷CLUB QUATTORO

2009年5月28日(木)

開場18:00/開演19:00
前売料金:¥4,000(税込・ドリンク代別途¥500)
チケット取扱:
ぴあ/TEL:0570-02-9999(Pコード:317-699)
ローソン/TEL:0570-084-003(Lコード:78677)
e+
問合せ:渋谷CLUB QUATTORO TEL:03-3477-8750

キーワード:

渋さ知らズ / 20周年 / 不破大輔 / 渋響 / 渋栗


レビュー(0)


コメント(0)