骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2009-05-01 16:09


映画の愛に☆直感 第3回:語れないものを沈黙するのでなく、語るしっす! イタリアン・ホラーの傑作『サスペリア・テルザ 最後の魔女』

『サスペリア』『インフェルノ』に続く“魔女”3部作の完結編がついに日本上陸!孤高のホラー作家ダリオ・アルジェントの監督作に、章氏の直感が今日も冴える!
映画の愛に☆直感 第3回:語れないものを沈黙するのでなく、語るしっす! イタリアン・ホラーの傑作『サスペリア・テルザ 最後の魔女』
ダリオ・アルジェント監督の娘、アーシア・アルジェント(右)が出演している (C) COPYRIGHT MEDUSA FILM S.p.A.・2007

あー、物質で心は満たされず、精神が満たされる時代に移行してますねんと、感じた時に、ダリオ・アルジェント監督(以下、大先生)の実娘アーシア・アルジェント(以下、初恋の人)主演の映画『サスペリア・テルザ 最後の魔女』に出会ったのです。

お話は、初恋の人が、ローマの美術館で働いておりまして、そこにかなり危ない古い遺品が送られてきて、開けたらあかんのに同僚の女子と開けちゃったら、最強の最悪の魔女「涙の母」が復活して、同僚の女子の心も身体も魔女の乗り物になってしまい、ローマに魔女復活を祝い、邪悪な人々が集まり、ローマの人々も悪党になってしまい、やりたい放題で、まさに自由の暴走!! 暴動でどさくさに紛れて、モノ盗んだりが、もっと過剰になっておるんです。まさに血祭りである。教会燃やしてみたい!! で、初恋の人は、とにかく、行く先々で困難に出会い、希望は、絶望の始まりでもあって、兎に角、艱難辛苦を乗り越えて、実は、初恋の人の亡くなった母は、魔女(白魔術)でして霊になって助言するのです。初恋の人は色々導かれ、ローマを、獣になる世界を、救うべく「涙の母」に対決するのだ!!

サスペリア・テルザ02
(C) COPYRIGHT MEDUSA FILM S.p.A.・2007

独りで丑三つ時に観たのですが、もー怖い!! 常に不安定な絵でありまして、落ち着かない、そして照明の工夫とゴブリンのアドレナリン出まくりの不安な音楽は、怖すぎて誰かと観ないと危険である。『サスペリア・テルザ最後の魔女』は、『サスペリア』『インフェルノ』と続いてきた魔女シリーズの完結編でありますて、ちゃんとお話が繋がっておるのです。
で、初恋の人を助言する母は、大先生の元嫁はんで、三人は元家族である。一人にしないでと、消え行く母の霊に泣いちゃう初恋の人の涙が、やはり惚れてしまう。トラウマ、スタンダールシンドロームの叫び声から初恋なんですねん。やっぱり、最後に良い叫びがありますて、ダメだ好きすぎるのです。

そうだ!! この作品は精神そのものなんだ!! 世間様はオカルトを定義か、幻視と捉えるが、大先生は感じた事を映像にしておるのです。目に見える事は存在せず、見えぬものこそが真実だ!! と、大先生は表現してるのです。ちゅうか、大先生は、目に見えないものを映画にしておるんです。語れないものを沈黙するのでなく、語るしっす。ショッキングシーンもCGでなく敢えて手作りのSFX、新鮮なウジ虫も出演!! 猿の演技指導も完璧なのだ!! で、真っ赤がキレイであり、闇のとらえ方が素晴らしく(アンゲロプロス大先生の黒と違うけど)、細部の美術のこだわりまくりで、陰が怖い!! そこには大先生の精神しかない!!

サスペリア・テルザ01
(C) COPYRIGHT MEDUSA FILM S.p.A.・2007

エンドロールで流れるデモニアのシンフォニックブラックメタルが良すぎる、声がダニ・フィルスで、もーー完璧!! そして、エンドロールが終わり闇がそこにあるのです。
初恋の人、アーシア・アルジェントは理想的であるのです。

追記:
この作品を楽しむ無駄なキーワードは、月刊ムー / ピュタゴラス / ギリシア神話 / 錬金術 / カバラ / ビトケンシュタイン / マヤ暦 / マリオ・バーバ / サスペリアのビデオ(DVDでなく) / 霧の中の風景 / グノーシス主義 / ニーチェからフロイト読んでユング / カフカのペスト / ブラック・サバス / シスター・オブ・マーシー / クレイドル・オブ・フィルス / サテリコン…など、図書館、古本屋、DVD、映画館などで感じてください。

(文:松本章)

【過去の映画コラム】
第1回 変態群像劇『バサラ人間』(2009.3.25)
第2回 『buy a suit スーツを買う』『ニセ札』(2009.4.10)


『サスペリア・テルザ 最後の魔女』
シアターN渋谷にて公開中、他全国順次公開

恐怖映画史に残る名作『サスペリア』、カルト的人気を集める『インフェルノ』に続く“魔女”3部作が、30年の時を経てここに完結。イタリアン・ホラーの帝王、ダリオ・アルジェントの手による本作は、近年最も公開が待ち望まれたホラー映画といっても過言ではない。本国イタリアでは封切と同時に異常な反響を巻き起こし、スマッシュ・ヒットを記録した。その興奮はイギリス、アメリカを経て、遂に日本に上陸する。

監督・原作・脚本:ダリオ・アルジェント
出演:アーシア・アルジェント、アダム・ジェームズ、モラン・アティアス、他
2007年/イタリア、アメリカ/98分
提供・配給:キングレコード+iae
公式サイト

★松本章トークショーに出演!
「サスペリア大阪上陸記念☆トークショウ」
~決してひとりでは来ないで下さい?断固、アーシア・アルジェントを支持します!~

日時:2009年5月3日(日) 開場19:00/開演19:30
トーク出演:尾崎テロル(テロ・ファクトリー)、奥村香織、松本章(音楽・直感)
会場:深夜喫茶銭ゲバ(大阪市中央区千日前2-3-9 味園ビル2F)[地図を表示]
入場料:無料
※詳細はコチラから



松本章(まつもと・あきら)PROFILE

1973年生まれ、伊勢男子、現在西成在住。熊切和嘉監督全作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。最近は、熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』(全国上映中)、内藤隆嗣監督『不灯港』(7月上旬公開予定)、山﨑裕監督『トルソ』の音楽を手掛けた。特技は、直感。なりたいのは、音楽の、あつかいにくい新人?でした。
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