骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2008-12-24 21:30


アレックス・コックス監督来日レポートPart1 「これは凄いことになったぞ!!」

最新作『サーチャーズ2.0』の先行上映会で司会をつとめた、ライター/翻訳家の小林真里氏による来日レポート。
アレックス・コックス監督来日レポートPart1 「これは凄いことになったぞ!!」
写真:吉祥寺バウスシアターでおこなわれた田口トモロヲ氏(左)とアレックス・コックス監督のトークショー

アレックス・コックス監督と過ごした3 Days
ライター/翻訳家 小林真里

十数年前、当時大学生だった僕が、深夜なにげなくTVで観た『レポマン』が、アレックス・コックスとの最初の出会いだった。この映画に込められたパンク精神は、この独特のユーモアは一体なんなんだと、衝撃を受けると同時に深く感動した。イギー・ポップの主題歌が、暫くの間、頭から離れなかった。その数年後には、リバイバル上映された『シド&ナンシー』を観て、再び激しく心を揺さぶられたものだ。そして今年、アレックス・コックス監督は、6年ぶりの新作『サーチャーズ2.0』を引っ提げて戻ってきた。相変わらずの風刺と批判精神とパンク・スピリットが込められた、らしい作品だった。アレックス・コックス節は健在だった。

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その新作を観た一ヶ月後。宣伝を担当されていたアップリンクの石井さんから、アレックス・コックス監督が来日し、『サーチャーズ2.0』の先行上映イベントを吉祥寺と横浜でやるので、そのときのトークショーの司会進行をやってくれないかというオファーをいただいた。しかも、ゲストは田口トモロヲさんと永瀬正敏さんという、監督に縁のあるお二人だ。司会業なんてやったことなかったが、こんな貴重な機会は滅多にあるもんじゃないし、なにがなんでもやらねば!と、躊躇なく、是非やらせてくださいと返事をした。これは凄いことになったぞ!!この日は、興奮してアドレナリンが体中を駆け巡り、夜眠れなかった。

写真:『サーチャーズ2.0』より (c)2007 COWBOY OUTFIT, LLC PRODUCTION

■11月16日(日)
アレックスと初顔合わせ 「やばい、興奮してきた」

アレックス・コックス来日

夜、石井さんから連絡が入った。アレックス監督が無事来日し、渋谷でディナーをするので、顔合わせのためにも是非ご参加くださいというお誘いだった。アップリンク前で石井さんや提供元JVCの安藤さんらと落ち合い、ホテルに監督を迎えに行く。やばい、興奮してきた。頭の中でイギー・ポップの曲が鳴り響いていた。そして遂に対面した監督の第一印象は、顔が小さくて長身、しかも笑顔が素晴らしい、なんてジェントルで物腰がエレガントな人なんだ!というものであった。

ホテルそばのレストランに移動し、食事そっちのけで監督のトークに耳を傾ける。ジョー・ストラマーとの初めての出会いは『シド&ナンシー』製作中の、あるパーティのトイレだったという話。次回作となる『レポマン』の続編、『Repo Chick』についても色々と教えてくれた(「列車」「おもちゃ」がキーワードとなる、CGを多用した作品になるよetc)。さらに穏やかな口調でオバマ政権については懐疑的な見解を示し、笑顔ながらも時折痛烈なコメントを繰り出し、変わらぬパンク的な資質を垣間見せてくれてゾクゾクした。そして、石井さんがトークショーのゲスト2人の名前を告げると、「エクセレント!」と顔をくしゃくしゃにして喜んでいたのがとても印象的だった。アレックスは長旅の疲れを一切見せず、結局晩餐は2時間半にも及んだ。なんてアメイジングな時間を過ごしたのだろうかと興奮に酔いしれながら、この夜もなかなか寝付けなかった。


■11月21日(金)
バウスシアターで先行上映 「安堵と興奮で気分はハイに」

先行上映イベント初日の会場は、吉祥寺のバウスシアター。アレックスと田口トモロヲさんの話を一番間近に見られるという幸運に感謝しつつ、エキサイトしながら吉祥寺に到着。劇場の控室で田口さんとご対面しお話を聞いていると、アレックスとの再会と、この日のトークショーを心底楽しみにしていたのだという想いがひしひしと伝わってくる。アレックスが到着し、田口さんと再会を喜び合っている姿は、なんとも感動的だった。

トークショーが始まり、最初の出会いや過去に一緒に仕事をしたときの話を中心に、二人が絶妙の掛け合いを見せてくれる。エンターテイナーである田口さんのユーモアに満ちたトークに、自分もいちオーディエンスであるかのように笑ってしまった。田口さんを主役に想定してアレックスが既に脚本を書き上げたという、『カワサキカラスとガキ』の製作が早く実現することを祈らないわけにはいかなかった。あっという間に40分弱のトークショーが終了。あまり緊張することなく、とりあえず無事役目を果たせたという安堵の気持ちと、二人の刺激的なトークを目の前で聞けたという興奮でハイになっていた自分がいた。

小林×アレックス・コックス

その後、近くのアジアン居酒屋で打ち上げ。この日もアレックスの隣で興味深い話の数々を拝聴した。『ラスベガスをやっつけろ』は、当初アレックスが監督するはずで脚本も書いたのだが、テリー・ギリアムにその座を奪われてしまったという。完成した映画は観たの?と尋ねると、「いや、観てない。でも僕が撮ってたら、もっと面白い作品が完成していたはずだ」と笑いながら語っていたが、目は真剣だった。他にも、ハリウッドの映画ビジネスがいかにマフィアと密な関係にあるのかという裏話や、書き上げた脚本が40本近くあり、そのうちの半数は既に売れたという話を次から次へと披露してくれて、前日以上の興奮に酔いしれる。

写真:小林真里氏(左)とアレックス・コックス監督

0時前に店を出て、井の頭線の終電に乗り、アレックスらと一緒に帰路につく。アレックス・コックスと一緒に電車に乗る日が来るとは、なんともシュールな気分だった。


※横浜シネマジャック&ベティで行われたイベントレポートを含む全文章は、劇場で販売するパンフレットに収録されています。

『サーチャーズ2.0』
2009年1月10日(土)よりアップリンクX、吉祥寺バウスシアター、横浜シネマジャック&ベティにてロードショー

監督・脚本・編集:アレックス・コックス
エグゼクティブ・プロデューサー:ロジャー・コーマン
出演:デル・ザモーラ、エド・パンシューロ、ジャクリン・ジョネット、サイ・リチャードソン、ザン・マクラ―ノン
2007年/アメリカ/96分
提供:JVCエンタテインメント 配給・宣伝:アップリンク

初日限定、特別併映あり!
『アレックス・コックス・イズ・バック』(約20分)

2008年11月に来日したアレックス・コックスに密着したドキュメンタリー。単独取材、横浜、東京で行ったイベントなどを通して彼の溢れる映画愛、ハリウッド・映画業界に反抗し続ける生き様、貫き続けるインディペンデントスピリッツの原点を探る。田口トモロヲ、永瀬正敏などにも取材を行い、アレックス・コックスの人物像に迫る。
・渋谷アップリンクX:1月10日(土) 13:00~/21:00~
・吉祥寺バウスシアター:1月10日(土) 21:15~
・横浜シネマジャック&ベティ>:1月10日(土) 20:00~

公式サイト


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