イラスト:泉川マクフライ
弱冠23歳にして監督・脚本・主演を務めた『19』で鮮烈にデビュー、独自の世界観でオーディエンスに挑戦し続ける映画監督・渡辺一志。俳優としても活躍し、「撮る/撮られる」という境界線を軽々と飛び越え、ジャンルに縛られず美意識を貫き通す姿勢は、初めて8㎜カメラを手にした高校時代から現在に至るまで変わっていない。
11月1日(土)より、渡辺一志の足跡を豪華ゲストとのトークを交えて辿る、初の特集上映がアップリンク・ファクトリーにておこなわれる。
『映画監督 渡辺一志 特集上映』が今週の土曜日(11月1日)から始まります。映画の上映前というのは常にドキドキして、高校時代に初めて人前で8mm映画を上映したときからまったく変わりません。今回の特集上映は、19歳の時に初めて長編として監督した8mm作品『19』(96年ぴあフィルムフェスティバル準グランプリ)から、8mm版の脚本をブラッシュアップし、映画会社に脚本を買ってもらって、初めてお金をもらって映画を監督したデビュー作である35mm版の『19』(2001年)から『キャプテントキオ』(2007年)まで。初上映のショートフィルムや、蔵出しの作品など、15歳から映画を撮り始めた17年間を、忍成修吾さん、川岡大次郎さん、浅利陽介さん、やまもとまさみさん、いしだ壱成さんなど、映画を通じて出会った友人たちとのトークで盛り上げます。
同時にアップリンクのギャラリースペースでは、マニアックな映画Tシャツで人気を集める僕の友人の「EMMETTBROWN」と「JETLINK」などのウェアブランドやアーティストたちの展示『コンジョイントストア』も行われていますので、これもまた新しい発見になると思います。
僕の映画をみたことのない人でも、観客とゲストと映画の距離の近い、楽しめるイベントになると思いますので、興味を持った方は一度ぜひ足を運んでみてください。
(文:映画監督・渡辺一志)
渡辺一志 特集上映作品
『19』 (2001年/35mm/82分)
出演:川岡大次郎、渡辺一志、野呂武夫、野沢那智
23歳の渡辺一志が監督、脚本、主演で放つ衝撃のデビュー作。実際に起こった事件をもとに、目的もないまま盗んだ車で旅を続ける男たちと、彼らに無意味に拉致され旅をする大学生との奇妙な旅を通して描かれる、青年たちの苛立ち、孤独、友情の物語。映画通で知られる、ファッションデザイナーのアニエスb.の絶賛を受け、全面バックアップのもと、世界配給された。サラエボ国際映画祭新人監督特別賞受賞、他。
『ネイティブアメリカン風の男を追え!』 (2005年/60分)
出演:忍成修吾、目黒祐樹、榮倉奈々、浅利陽介、板尾創路
海外映画祭用に『スペースポリス』を大胆に再構築。かつての“川口浩探検隊”を彷彿とさせる、モキュメンタリータッチのまったく新しい映画へと生ま れ変わった!“ネイティブアメリカン風の男”こと、スペースポリス“軍曹”を演じる目黒祐樹の目ヂカラに、板尾創路のゆるいダンシング、忍成修吾、榮倉奈 々、杉作J太郎、カンニング竹山などの強烈なキャラクターたちの夢の競演は必見。
『探偵事務所5~ウサギ&探偵576編~』 (2006年/80分)
出演:佐伯新、渡辺一志、藤谷文子、目黒祐樹、佐野史郎、ミッキー・カーチス
自由気ままな青年“ウサギ”と気弱な探偵576の凸凹コンビが、事件を解決していくハードボイルド(?)・バディ・ムービー。不自由な世界で自由に 生きる主人公“ウサギ”は、渡辺一志の美意識を集約させた、等身大のヒーロー像でもある。映画の垣根を飛び越えて、スペースポリス“軍曹”も友情出演する ので『ネイティブアメリカン風の男を追え!』とあわせてみると、より楽しめる。
『19』8mm版 (1996年/50分)
出演:渡辺一志、福山亮一、野呂武夫、有馬顕
衝動に突き動かされ、わずか19歳で監督した8mmフィルム映画。8mmフィルム独特のざらついた質感と、ドキュメンタリー的な撮影手法を駆使した 演出は学生映画ながらも高い評価を得て1996年のぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞。のちに『19』は長編劇場作品として渡辺一志自身の 手でリメイクされる。その早熟な才気に注目。
『ゼブラ』 (1997年/8mm/10分)
出演:加藤ナオ、島田亮輔、渡辺一志、レオナルド備前
大学時代、アレックス・コックス監督の『ストレート・トゥ・ヘル』に刺激を受けて製作された8mmフィルム映画。逃げる男女、追う男、拳銃、カーチェイス、暴力、突き抜ける青い空。全編を通してアメリカ映画的な色彩と世界観で作り込まれた意欲作。
『ステイフリー』 (2002年/25分)
出演:渋川清彦、渡辺一志、三輪明日美、藤谷文子
伝説の激ロックバンドPEALOUTのミュージックビデオとして撮影された『ソウルライダー』『GOODBYBLE』『旅人の歌』の3編を、新たに 追加シーンを撮り足し、ひとつの物語として完成させた短編映画。情けなくてイカした、ふたりの男の何気ない日常を音楽ともに綴る。馬鹿馬鹿しくて、ちょっとだけ泣けるロックムービー。
『やまもとまさみを探せ!』
やまもとまさみ、芸人。2007年『R-1グランプリ』ファイナリストであり、独特のネタで観客の笑いのツボを刺激するピン芸人、やまもとまさみは、渡辺一志映画の隠れた常連俳 優でもある。ときには主役、ときには強烈な印象を残すワンポイント・キャラクターとして、映画の中に隠れたやまもとまさみを探し出そうという、実にゆるい プログラム(?)。ゆるさの中に妙なヒーリング効果がある“まさみワールド”は、特につかれた人にオススメ。
『キャプテントキオ』 (2007年/35mm/95分)
出演:ウエンツ瑛士、中尾明慶、泉谷しげる、いしだ壱成、日村勇紀(バナナマン)、石立鉄男
『北斗の拳』+『ニューシネマ・パラダイス』というトンでもない発想(!?)から生み出された、まさに渡辺一志のおもちゃ箱のような映画。西暦 20XX年の新東京都を舞台に、映画づくりに情熱を注ぐ青年たちと、悪の支配者“都知事”との対決をマニアックかつエンターテイメントに描く。本作が遺作 となった石立鉄男の存在感は圧巻。千葉繁のシャウトするナレーションが、ジャンプコミックの黄金期を彷彿とさせる痛快青春映画。
■渡辺一志PROFILE
名古屋市出身。23歳のときに『19』で脚本・監督・主演。海外映画祭で高い評価を得て、サラエボ国際映画祭では映画通で知られるファッションデザイナーのアニエスb.氏の激賞を受け、新人監督特別賞を受賞。その後、アニエスb.のサポートにより、ヨーロッパ、アジア諸国で『19』は公開される。続く『キャプテント キオ』では、クレイジーでアナーキーな作風で、独自の世界観を作り上げる。
俳優としても三池崇史監督『ビジターQ』、林海象監督『探偵事務所5』などに出演。ベルリン国際映画祭に出品された奥秀太郎監督『カインの末裔』では主演の棟方を演じ、映画評論家のトニー・レインズ氏から絶賛を受ける。再び奥監督とタッグを組んだ主演作『USB』では、桃井かおり、大杉漣、大森南朋ら日本映画を代表する俳優たちと競演し、存在感を発揮する。
『映画監督 渡辺一志 特集上映』
日時:2008年11月1日(土)~7日(金) 19:00開場/19:30開演
会場:アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)[地図を表示]
料金:前売1,500円 当日1,800円
上映スケジュール&トークゲスト
11月1日(土)
- 『ネイティブアメリカン風の男を追え!』 ゲスト:忍成修吾
11月2日(日)
- 『19』35mm版 ゲスト:川岡大次郎
11月3日(月・祝日)
- 『やまもとまさみを探せ!』 ゲスト:やまもとまさみ
11月4日(火)
- 『19』8mm版&『ゼブラ』&『ステイフリー』 ゲスト:渡辺一志
11月5日(水)
- 『探偵事務所5~ウサギ&探偵576編~』 ゲスト:浅利陽介
11月6日(木)
- 『19』35mm版 ゲスト:オオヤギみき
11月7日(金)
- 『キャプテントキオ』 ゲスト:いしだ壱成