「あなたなんか嫌い」といわれた。
「あなたは嘘つき、あなたはひどい人」
彼女は僕をなじった。そして、
「もう会わない」
そう云って彼女は僕の下から去った。
嘘つきなのも、ひどい人なのも、ずっと前から知っていたから、今更傷つきはしなかったけれども、ああ、彼女は僕が嫌いなのだとしみじみ思ったら、泣けてきた。
それから僕は情緒不安定だ。
鳴らない電話、届かないメールを眺めながら、
「僕もあの子を嫌いにならなくってはいけないのかなぁ」
と溜息をつく。
「君の言い分もずるいもんだ」
「君だって、僕の気配を窺いながらいっぱい嘘をついたし、いっぱい僕を傷つけたじゃないか」
「気づかなかったわけじゃない。気づかないふりをしてたんだ。好きだから、見ないふりをしていたんだ」
「そうやって、君だっていっぱい僕を利用し、振り回したんだ」
「被害者のフリはやめてくれ」
心の中で精一杯なじってやる。
だけれども、もう、喧嘩をすることすらできない仲になってしまったらしい。
彼女は遠いところに行ってしまった。
この愛は枯れてしまった。
なのにどうしてだろう。
「今でも好きなんだ」
リフレインのように、繰り返す。
君には僕の愛がわからないだろう。
だけれども、繰り返し繰り返し僕は呟いた。