2013-07-26

『トゥ・ザ・ワンダー』クロスレビュー: 私たちを包む愛 このエントリーを含むはてなブックマーク 

映画を観るとどうしてこのタイトルなのだろうといつも気になる。「wonder」を辞書で引くと最初に「驚異、奇観、奇跡」、二番目に「不信感、不安」という意味が出てくる。モンサンミシェルは「驚異」という異名を持つそうで、そこからこのタイトルが来ているのであろうが、いろいろな意味を込めてつけられたタイトルなのだと思う。

テレンス・マリック監督の作品を鑑賞するのは「ツリー・オブ・ライフ」に続いて二作目。「ツリー・オブ・ライフ」では衝撃を受けた。映像に惹きこまれ、感情が揺さぶられ、鑑賞後の数日間あれは何だったのだろうと思いめぐらさずにはいられなかった。今回も期待を裏切らず、同じように美しい映像に酔い、登場人物たちの心の葛藤に胸を衝かれ、鑑賞後も様々なシーンを咀嚼しようともがいている。

男女の間の愛と、愛しすぎるあまりに感じる孤独。神から注がれる愛を光や空気のように感じる喜びと解放感、見失ってしまった時の苦悩と閉塞感。様々な感情が対照的に描かれている。

ブルーグレーの幻想的なモンサンミシェルと、金褐色のオクラホマの平原の対比も印象的。(チラシも裏表で対比しており、女性も違うことに後から気づいた。)

そして、水。モンサンミシェルの入り江に静かに満ちていく潮。オクラホマで環境調査のために訪れる川の流れ。「しかし、わたしが与える水を飲むものは決して渇かない。わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る。」(ヨハネ福音書4章14節)というキリストの言葉が心に浮かんだ。

咀嚼しきれないがそれでよい。112分間、日常生活から離れて美しい世界に浸り、鑑賞後もこんなに心動かされて時間を過ごせるとは、なんと贅沢な体験だろうと思う。

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波野ノリスケ

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