富裕層ばかりが注目される現代の中国だが、雲南省海抜3200mの小さな村の本当に貧しい生活が、胸に突き刺さるドキュメンタリー。
貧しさに耐えかねた母親は家を出て行き、出稼ぎに出ている父親の留守を守り、幼い妹の面倒を見る長女、英英(インイン)は10歳。次女珍珍(チェンチェン)6歳、三女粉粉(フェンフェン)、祖父や父方の親族は近くに住んでいるとはいえ、土壁と土間の薄暗い家で、この姉妹だけで暮らしている。姉妹は、父親が不在になってから、身体や衣服を洗うことなどもなく、垢まみれの着た切り雀、チェンチェンの長靴には穴が開いている。
時に無邪気に振舞うチェンチェンとフェンフェンと違い、長女インインに笑顔はない。貧しさや孤独に必死で耐えているのか、沢山の感情を封印して、妹たちの世話をし、豚、羊、山羊の世話をする。
久し振りに帰宅した父親に、祖父が、インインが羊を逃がしてしまって、長兄が弁償したと告げても、その後父親が妹二人を連れて出稼ぎに行き、一人残された時でさえも、表情は変わらない。
一人現実を受け入れ、生きている10歳の少女が、ただ二回だけ感情を露わにして、他者を激しく罵る場面がある。怒りだけが、感情を動かす、彼女の過酷な現実。三人姉妹の今と将来のことを思うと何も言葉に出来ない。ただただ、胸が締め付けられる。ワン・ビンの傑作だ。
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