■映画について
『三姉妹~雲南の子』は、中国の最貧困地域である雲南省で、逞しく生き抜く一家を浮き彫りにするドキュメンタリー映画である。
ナレーションによる解説は一切ない。登場人物の名前と相関関係、時期、場所の説明が簡単にされているのみである。
「演出」も一切なく画面の中に映し出される出来事はすべて自然の中の偶然である。私たちが暮らす場所からは遠く離れているが、日常の中にある仕草や行動は共通する部分も多く、共感を覚える事もしばしばある。
■日本と雲南省
極貧生活の中の自然の厳しさには、私たちの想像を絶するであろう。
私は現在27歳である。
現在の雲南省の現状は戦後の日本と似ているように言われるが、戦後を経験していない世代にとって、やはりそれは想像の域を出ない。
日本は望めば何不自由なく手に入れられる国である。インフラは整い、公共設備や福利の面でも優れている。
その便利な社会で、本作のような貧困に接することは現実にはほとんどありえないであろう。たとえ映画であっても人々の目に入る機会は少ないであろう。
なぜならば、本作が取り上げる主題は、私たちからすれば「過去」だからである。
現在は未来へ向かって刻々と突き進み、決して戻る事はない。
少しでも足踏みをすれば、途端に取り残される風潮にある。
日本に限らず文明とは、常に発展を求め、効率性と利便性を脇に通れて歩くのであろう。
本作の舞台である雲南省の村においても、中国の発展に引き上げられようとしているのである。
■映画が訴えるもの
本作において、具体的かつ明確なメッセージはない。
画面に映し出される映像と音で、自ら想像するしか方法がない。
しかし、一つだけ明確にあるのが、これが世界の中の一つの村であるということである。
架空の村ではなく、現実に存在し、そこに暮らしている人たちがいるのである。
どの国が豊かで、どの地域が貧しいかという単純なことではない。
どこが優れていて、どこが劣っているのかを比較するのも短絡的過ぎる。
あえて言えば、雲南省の三姉妹も私たちと同じ人間であるということではないだろうか。
なんの新鮮味もないことだが、これが真実であると思う。