2013-04-21

『世界が食べられなくなる日』クロスレビュー:安全と危険が隣り合わせのテクノロジー? このエントリーを含むはてなブックマーク 

タイトルの「世界が食べられなくなる日」という興味深いタイトルにひかれ、安易に観てみたいと思い観てしまった映画でしたが、安易な内容とは程遠いものでした。

まず、遺伝子組み換え作物と原子力問題、という一見して共通点があるのか?と疑問に思える2つのサブジェクトを一緒に描いたものでした。
また例え共通点があっても一緒に描く必要があるのか、と見始めた時に思ったのでしたが、最後にはその疑問に応えてくれる映画でした。

厳重な装備のもとでの200匹ものラットをつかっての遺伝子組み換えトウモロコシ投与の実験が、2年にもわたっておこなわれた事実。
ラットの中には異常な腫瘍ができはじめ、徐々にそれが肥大していき、それは見るに堪えがたい悲惨なものでした。
フランスでは遺伝子組み換え食品には食品表示を徹底している、と安全を誇示しているようですが、この実験を見る限り遺伝子組み換え作物は安全ではなく危険なテクノロジーであるわけです。
人々は遺伝子組み換え食品を口にし、その結果徐々に身体をむしばまれていくということを示唆しているのです。

私のフランス人の友人達から、フランスは農業大国で安全な農法を取り入れているというイメージをうえつけられていたのですが、この映画を観てその違いにショックを受けました。
大きな農園のその先には原発の煙がたちのぼる、という対照的で象徴的なシーンを見せつけられ、複雑な気持ちに陥りました。
原発保有数は確か世界第2位くらいだったはずのフランスは、この両極の実態に矛盾を感じている人々も多いであろうと伝えてくれているようでした。

また、もう1つの危険なテクノロジー、原子力についても大きく取り上げたわけです。原子力テクノロジーはそもそも人類のために開発されたもので、かつ安全を確保したテクノロジーであるというのがスタート時点だったはずです。それが今では大きな問題となっているのです。

原発問題についてはタイムリーである福島の様子を取材を撮り入れたシーンや、都心での多くの人達の原発反対デモ等の場面が多く映し出されました。
しかし福島の原発問題はテクノロジーだけのことではなく、それに絡むもっと複雑な問題もあるわけですから、、、
この問題に関しては、フランス国内の原発問題をもっと数多く知らせてほしかったと思いました。ラットの実験はフランスで行われていたし、大きなフランスの農園等も映し出されていたので、その対比としてフランスの原発問題がもっと多く映し出されたほうがよかったと私は思いました。

遺伝子組み換え作物によって食べられなくなる、原発によって人命を落としてまさに人は食べられなくなる、ということです。
2つのテクノロジーによって本当に人々は食べられなくなる日を迎える、ということを強く訴えています。
映画を観終わって、振り返って、考えさせられて、2つのテクノロジーの共通点を見出すことができました。
そしてタイトルの意味を知ることができました。
意味深いタイトルであったわけです。

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Angelicca

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