『未来の食卓』のジャン=ポール・ジョー監督が描く、“遺伝子組み換え”と“原子力発電”の二つのテクノロジーに焦点をあてたドキュメンタリーです。
2009年、“遺伝子組み換え食品を食べ続けるとどうなるか?”フランスのセラリーニ教授たちが極秘に開始した動物実験、それは200匹のラットを20のグループに分け、遺伝子組み換えトウモロコシ餌の配分、農薬の配分をそれぞれ変えて与え続けることでした。実験期間は、ラットの一生にあたる2年の歳月。
現在、市場に流通している安全基準は、ラットに遺伝子組み換え食品を3ヶ月与えても問題はなかったというモンサント社の実験結果をもとに作られています。人間の寿命を80年とすれば、ラット3ヶ月は人間の10歳にあたります。10年以上食べ続けるとどうなるかの結果がないままに安全とされ、世界に流通しているのです。
(しかも日本はトウモロコシの世界最大の輸入国で、年間約1600万トン。約9割がアメリカ産で、そのうち88%が遺伝子組み換え品種!同様に輸入大豆の7割がアメリカ産、うち93%が遺伝子組み換え品種!)
実験結果は、皮肉なものとなりました。4ヶ月後に最初の一匹が死亡します。それだけでは、死亡の原因が餌にあるとは言い切ることはできません。そのうちに、遺伝子組み換えトウモロコシ餌の配分が多いラットに次々と異変が起きていきます。乳がん、腎臓障害、腫瘍の肥大化。複数の腫瘍のため、元の姿が分からなくなっているラットもいました。3ヶ月目までは何事も無かったのに・・・。
ただ、気になる点が一点ありました。この実験は、悪影響が出ることが前提となっているようで、“途中で遺伝子組み換え食品を食べるのをやめるとどうなるか?”という選択肢が含まれていませんでした。ラットには可哀想ですが、途中で遺伝子組み換え食品の摂取をやめた場合の実験結果も見てみたいです。
さてこの映画は、“遺伝子組み換え”と“原子力発電”という、いのちの根源を脅かす二つのテクノロジーに、[後戻りができない][すでに世界中に拡散していること][体内に蓄積されやすい]という3つの共通点をあげていました。後半では祝島の住人、ご主人が自殺した福島農家の奥さまなどが登場し、リアルタイムで損なわれた世界を生きている身として画面を見るのが辛かったです。
家畜経由により、すでに大量の遺伝子組み換え食品を食べている私たち、自分が口にしているものが何なのか、考えながら生きないといけない時代になったようです。