一家を突如襲った父親の死。
のこされた娘は庭の大きな木に父親の声を聞く。
監督ジュリー・ベルトゥチェリは、映画の中でこれまでも家族という題材を扱っている。
長編デビュー作の「優しい嘘」では、グルジアで母子家庭に生きる祖母、娘、孫娘の親子3世代の絆を描いた。
家族とは絆であり繋げるもの。
自然と同様、人に寄り添い、時に心地よく時に厳しい。
大きな愛情の源である父親の死に、のこされた家族は戸惑い、深く悲しむ。
今作には家族の喪失と相対するように「自然」が扱われている。
自然への畏怖と畏敬。
家を傷つける木の根は父の怒りか、それとも残された家族の憤りか。
木になった父は幻想か、真実か。悲しみの具現化された姿かもしれない。
しかし豊かな想像力は生きる力となる。
悲しみとともに生きて行く、それは生きる者の特権である。
子供のまなざしには「生きる力」が、妻であり母である一人の女性を演じたシャルロット・ゲンスブールの素朴で繊細な表情や佇まいには原始的な「愛」が表れていた。