庭の大きなゴムの木には、突然この世から去ってしまったパパが宿っている。
うそかまことか。それは秘密。
だって、信じた人にとってだけ真実となり得るのだから。
木にささやきかけ、かえってくる声に耳を澄ます。
表皮に体温を感じ、木の傍らで抱かれて眠る。
まるでパパがそこにいるかの様に。
幼い娘にはまぎれもなくゴムの木はパパなのだ。
手や足をのばしてきたり、妻の色事に怒って枝を折って寝室をなぎ倒したり。
うねる枝や根はパパの心を映している。
次々に起こる、時に可笑しくもある不思議な出来事。
そんな不思議な日々は次第に家族の心を癒し、未来へと導いて行く。
悲しみとは、幸せとは。
記憶から続く過去・現在・未来について。
映画の中でそれらは一体となって感じられ、また力強く行く先を指し示していた。
シャルロット・ゲンズブールの等身大の演技は、妻として母として女としての存在の他に
大きな意味で、自然と人間との関わりについて静かにやさしく教えてくれた。