朝鮮戦争後、沢山の子どもが棄てられ、欧米の家庭に養子として迎えられた。20万人を超える子どもが祖国を後にしたそうだ。この映画の主人公ユンは、正にその葛藤の中で育ち、自分の居場所(アイデンティティー)を求めて苦悩する。
養親一家が撮影した1971年当時の8mmフィルムを交えながら、ユンがベルギーの家族の一員として迎えられ、成長していく姿は、バンドデシネ(この映画の中ではバンデシネ、個人的にはBDベデは、バンドデシネという言葉の方が馴染みが深いので、そう使わせてもらうが)で描かれる。後に、葛藤を表現に昇華させてバンドデシネ作家となったユン自身が描く、当時の生活は、非常にリアリティがあり、生き生きと描かれている。心無いいたずらや性の目覚めなどを、綺麗な思い出だけに済ませていないところがよく、それだけにユンの葛藤は浮き彫りにされる。
成長したユンが韓国を訪れるドキュメンタリーパートは少し物足りない。もう少し、ユンの内面に迫って欲しかった気もするが、見ぬ生母を探し求めて、養母の愛を再認識するエンディングは泣けた。
家族や親子関係について、考えることの多い人には、ぜひ観て欲しい映画だ。