何年か前パレスチナの討論集会(たぶん「土地の日」だろう)に参加したときに、パレスチナ国家成立について支援のよびかけがあった。この手の意見もわからないではないが、すべての問題になかで優先課題にせよという発言に、鼻白むものを感じていた。たまたま司会者が足立正生に発言を即したのだが、彼はシンプルに、パレスチナの民を支援することの意味を語っていた。彼のその発言になんとなく救われた思いがして、すっきりした気分になった。集会から帰るときも足立正生とお連れ合いと娘が歩いている姿をを微笑ましく見やった。
なぜ、個人的な記憶を書いたかというと。どうにも映画に対応できなかったからだ。この映画は足立正生を知っている人でないとわからないのどうか、むしろまったく知らない人がこのドキュメンタリーを観て興味を持ってもらったほうがいいのではないか。
この映画のなかで足立監督が撮影された作品らしきインサートショットがあるが、シュールで美しいシーンであり、それはなかなか想像力を掻き立ててくれる。
また、彼の語るパレスチナ支援闘争や政治運動について、彼の著作やあの時代を描いた本などを読んで理解をすすめ、それで政治と芸術の問題やトロツキーの『文学と革命』をあらためて問い直すこともできるだろう。
そうはいってもこの映画は、フランスの映像作家が頭のなかと東京にきたときの体験なので、たとえば東京の高速道路のシーンをタルコフスキーの『ソラリス』の類推させる、として撮影していたが、それは足立正生とは結びつかない。渋谷の駅前交差点なども、どうもあまり意味あるシーンと思えない。足立正生の映画を観たくなってきた。