これは、痛々しい現実を、それから目を背けたりごまかしたりすることなしにそのまま描いた作品である。そのような映画というと、昨年鑑賞したナタリー・ポートマン主演「水曜日のエミリア」を思い出す。そちらは何となく救いがないまま終わってしまい、鑑賞によってエネルギーが奪われたようでドッと疲れ、「あぁ今後は純粋にエンターテインメントとして楽しめる作品しか観るまい」と思わせられた。
しかし一方本作では、登場人物の生傷の痛々しさを直視しながらも、そのような傷を持った者同士の交流によって自然とお互いの傷が癒されていくのだと感じさせられ、一筋の光を見、救われた気分になった。
ジョセフの親友の娘の「父の人生だから仕方ないわ。誰にも助けられないの。」というセリフ、自分の家に逃げてきたハンナにジョセフが言う「俺も自分のことで精一杯だ。他人とは暮らせない。あんたを助けられない」という(ような)セリフ。私にはこの2つがリンクしてなぜか印象に残っている。しかし、ただ突き放すだけでなく、「その人の人生の問題は究極にはその人しか解決できない。それはその通り。それでも、できる部分では支えあって行こうよ。」というメッセージをこの作品から得た気がする。