2012-09-18

【『これは映画ではない』クロスレビュー】映画を作れない監督の痛ましい叫びを目の当たりにする このエントリーを含むはてなブックマーク 

バナヒ監督の作品との出会いは1995年の東京国際映画祭で見た「白い風船」でした。詩的で素晴らしい作品で、すっかりお気に入りの監督の仲間入りをしたのでした。翌年の同映画祭で上映された「鏡」は本作の中でも登場するように主演の女の子が途中で映画を放棄するのをありのまま撮り続けるという大胆な作品で微笑ましくもスリリングな作品でした。ただその後観た『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』はイラン社会を鋭く批判するもので、この監督は意外にも社会派なのかと気づいた次第。もちろん両作とも映画としても面白く、次はどんな作品を届けてくれるだろうと待っていたのでした。ところが一昨年のカンヌの審査員でありながら自宅軟禁状態になって、映画人たちが解放の声明出すなど、心配の中、登場した新作が「これは映画ではない」というタイトル!
様々なところで目にしたようにユーモアにあふれる素晴らしい作品になっている一方で、映画を作れない監督の痛ましい叫びや苦悩を目の当たりにすることになりました。本作の中で監督は、作れないなら脚本を語って説明しようとするのですが、途中でこんなことをして何になるのかと頭を抱えてしまうシーンはやりきれません。映画のラストシーンの美しい夜の中の炎が監督の映画への思いを象徴しているようだと言ってしまったら、こじつけなんでしょうけど、一日も早く映画が作れることを祈ります。

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ぱぱちょん

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