2012-08-15

『わたしたちの宣戦布告』クロスレビュー:その後の闘病生活をもっと詳しく描いてほしかった このエントリーを含むはてなブックマーク 

「わたしたちの宣戦布告」は幼いわが子に悪性の脳腫瘍が見つかった若い夫婦の話であり、監督の実体験を描いている。しかも、監督自身が主演し、実際に夫婦だった俳優が映画の脚本を担当し、相手役も務めている。もし、同じ話を別の人が作っていたら、もっと悲劇の部分をクローズアップしていたのではないだろうか。重いテーマでありながら、軽やかに描くことができたのは、自分たち2人の体験だからこそかもしれない。

 映画では2人が出会い、結ばれ、子供を授かり、その子供が病に侵され、手術を受けるところまでは丁寧に描かれている。そして、その後の闘病の様子はさらっとナレーション中心に進んでしまう。しかし、夫婦にとって本当に辛かったのはこの闘病期間ではなかったのか? 
 私も子供を入院させた経験がある。大切な子供が入院するのは親として心配だし、できる限り寄り添ってあげていたいと思った。しかし、実際には入院中、面会時間べったりそばにいるのは私自身が辛かった。息が詰まるのである。私の場合は10日ほどで済んだが、主人公の2人は仕事を辞め、友達とも会わず、孤立しながら何年もそういう生活を続けたという。
 映画でも、朝起きられなかった夫が病室に遅れて来たことを妻が快く思わなかったシーンがあったが、我が子に対して一生懸命にすればするほどパートナーが自分と同じようにしなかったときに不満を感じるものだ。そうやってお互いを闘病だけの生活に縛り付けたりはしなかったのだろうか? ここのところをもっと描いてほしかったと思う。

 ところで、映画の中で母親がタバコを吸うシーンが何度も出てきた。恐らく出産前にも吸っていたと思われる。日本であった話ならば、喫煙のせいで子供が病に侵されたと母親は自らを責めただろう。そうしないところに文化の違いを感じた。

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ちょこ きゃりこ

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