2008-04-27

チェルノブイリ原発事故22周年オールナイト このエントリーを含むはてなブックマーク 

 1986年4月26日、それは現ウクライナ共和国チェルノブイリ原子力発電所で史上最悪の原子力事故があった日。それから22年後の4月26日、核兵器と原子力発電および所謂「核の平和利用」一般について多方面から考えるために企画されたレイトショーを、東中野のポレポレ東中野へ観に行った。

 http://www.mmjp.or.jp/pole2/

 上映作品は、 
 『ゴジラ』(監督:本多猪四郎、出演:志村喬・河内桃子・宝田明他、1954年)
 『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(監督:森崎東、出演:倍賞美津子・原田芳雄・平田満他、1984年)
 『原発切抜帖』(監督:土本典昭、ナレーター:小沢昭一、1982年)
 『アレクセイと泉』(監督:本橋成一、出演:ベラルーシ共和国ゴメリ州ブジシチェ村の人々、2002年)
 の四作。

 『ゴジラ』
 シリーズ第一作目。勿論モノクロ。未だ第二次大戦の記憶のさめやらぬ時代で、所々に戦争が残した傷が垣間見られる。ゴジラも太平洋での度重なる米国による水爆実験によって地上での滅亡以後も地底深くで生き続けていた恐竜の末裔が目を覚ましたという設定。ゴジラに恐れ戦き逃げ惑う人々の様子(作中で炎に包まれる街を見て米軍による焼夷弾投下を想い出した観客も多かったのではないか)やゴジラ対策を議論する国会内での緊迫感溢れたやり取りにはリアリティがあるものの、ゴジラに襲われる船舶や上陸したゴジラによって破壊される東京の町並みがいかにもミニチュアっぽくてちょっとチャチ。また、戦争で顔半面を負傷し隻眼でアイパッチをしている科学者が、自らの命と引き換えにしてオキシジェン・デストロイヤーなる新兵器でゴジラを倒すという設定も、二昔前のマンガ風でちょっと白けた。

 『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』
 監督は『釣りバカ日記』や『美味しんぼ』のような漫画の映画化もしているよう。
 名前も聞いたことのない作品だったが、今回上映の四作の中で一番印象に残った。
 コザ暴動(1970年12月に米軍統治下の沖縄・コザ市(現沖縄市)で起こった、沖縄の民衆による米軍・米軍軍属を対象にした焼き討ち事件)に参加し、追手を逃れて「本土」に渡って来た原発労働者兼チンピラとその情婦であるヌード・ダンサーを主人公に、米軍に献上された沖縄という象徴天皇制平和国家日本の「影」と、下請け孫請け労働者と彼等を管理しあの手この手で搾取するヤクザ等の原子力産業の「影」を重ね合せて、エンターテイメントとしても楽しめる仕方で戦後日本の「闇」を多面的に描いた佳作。
 舞台は名古屋港近くの沖縄料理店と「原発銀座」の一つである福井県敦賀市。
 とりわけ怪我をしてヤクザに消される運命にあった男と逃亡途中にヤクザに銃殺されてしまう女と、パスポートを取り上げられて昼夜売春を強制されるフィリピーナが哀れ。
 
 『原発切抜帖』
 日本の原子力政策の迷走ぶりを、テーマ毎に時系列に沿って原子力に関連する新聞切り抜きを再構成することで浮かび上がらせる映画。如何に日本の原子力政策が行き当たりばったりで信頼するに値しないものかが分かる。
 小沢昭一のナレーションと新聞の切り抜きだけで構成される。不覚にも途中少しウツラウツラ…。
 
 『アレクセイと泉』
 チェルノブイリ原発事故の影響で放射能で汚染されてしまった結果強制移住地域に指定され、実際農作物や森の茸等からは高濃度の放射能が検出されるにも関わらず、不思議にも村人の飲料水と生活用水を賄う泉からは全く放射能が検出されないという、ベラルーシの村が舞台。住人は故郷を離れるのを拒否した老人ばかりだが、青年が一人だけ年老いた両親を助けるためと称して村に残っている。彼には軽い言語障碍があり仕事には差し障りはないものの足も少し不自由。そのせいか両親の「お嫁さんを」の言葉にも、「僕にはいらない」と答える。
 『生きてるうちが花なのよ』や『原発切抜帖』のように原発産業の闇や迷走を告発するのではなく(それどころか、原発への批判的な言及さえ殆どない)、ひたすらに村での自給自足の日常生活が淡々と描かれる。東京に住む者の感覚からすれば貧しいし、家の中も服装も決して清潔とは言い難いのだが、ミジメではない。自分の畑で採った野菜を食べ、ガチョウや豚等たくさんの家畜を飼って家族の誕生日のような特別な日にはそれを手ずから絞めて料理する。チェルノブイリ事故のことがなければ、土に根ざした「理想の田園生活」として田舎生活を勧めるどこぞの雑誌で紹介されてもオカシくないくらい。

 http://www.ne.jp/asahi/polepole/times/sosna/alec/

 場内は八割がた満席。オールナイトなのに結構高齢の方もいた。三時頃休憩中にトイレから戻る途中ふとホール最後方を見たら、床にゴロ寝している女の子もいてビックリ(笑)。

 しかしもうゴールデンウイークだと言うのに寒かった…。

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知世(Chise)

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