2012-08-10

『ソハの地下水道』クロスレビュー:今まで語られなかったポーランドの真実 このエントリーを含むはてなブックマーク 

劇場予告で初めて知った「ソハの地下水道」。
ストーリーにとても興味があり、気になる作品だったのだが、意外にもその作品を耳にする機会はなかった。しかし今回、幸運にも人より早く鑑賞する機会を得た。

まず、この恐ろしくて壮絶な物語が実話を基に作られたことに驚いた。アンネの日記を初めてよんだ時も、想像を絶する現実に衝撃を受けたが、今回のストーリーはそれ以上である。
ポーランド人のソハはとても正直者だ。人として強欲で汚い部分を包み隠さず堂々と口にする。
そして、生きるため家族を養うために平気で泥棒をする。
ユダヤ人の弱みにつけ込み、匿う代わりに金品を要求する。路上育ちで抜け目ないソハは、初めはユダヤ人を騙すつもりだったのだ。そんなソハは、ユダヤ人として映画を観ている自分の目には、恐ろしくて醜く、憤りを感じる程である。
そんなソハを変えるきっかけを作ったのは、ソハが誰よりも大切にしている、愛する妻であろう。信仰深くて愛情深い彼女と会話を重ねることで「敵だから騙して死んでしまっても構わない」という気持ちが「同じ人間」という気持ちに変化していく。「ただの金づる」「見つかったら自分も道連れ」という匿い方から「友人」「愛すべき隣人」として匿うようになるのである。ソハがある程度の教養人であったなら、このような気持ちの変化はなかったであろう。路上育ちのソハだったからこそ、人から虐げられる立場、慈しみを受ける立場、様々な経験が困難をやり遂げる力を授けたに違いない。自分もソハやその家族一体となるよったような気持ちになるラストシーンが感動。
個人的には、ムンデク役のベンノ・フュルマン(アイガー北壁に出演。以来、ファンになった)がお薦め。原題(「IN DARKNESS」)そのままにした方が良かったかも。

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きむりん

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