冒頭から、映された場所や仕事の内容の説明は全くない。
「あれ、これは何だろう」とか考えているうちに、別の場所へ。
カメラの動きも、ズームやパーンなどない。
音楽もなし。
ただ切り取られる現実のみがたんたんと映し出される。
まるで監視カメラのレンズ越しに見ているような気分。
余計なことは考えるのはやめて、ただ見ることに専念する時間。
夜は機械を相手に仕事をする人たちが多い。
24時間動き続ける社会のシステムの一部として必要な仕事
人命に関わる緊張感のある仕事
人々に快楽の夜を提供する仕事
人間と仕事をする人たちには、たとえそれが売春婦であれ、どこかほっとさせられる。
何かを何かから守る仕事
国境、難民、ロマ、EU
ヨーロッパのさまざまな現実
聖と俗
静と動
生と死
さまざまな対立概念が頭に浮かぶ。
電気によって夜を征服した人間はどこへ向かうのか。
ナレーションや説明で限定されるものがない分、自由な見方が許される作品だ。
「勝手に考えてみて!」と言われた感じ。
原題「abendland」は「西洋」とか「日の沈む土地」とか含蓄のある言葉のようだが、
日本語タイトルを『眠れぬ夜の仕事図鑑』とわかりやすくしたことで、深みが失われ、
監督の意図から少しずれてしまったのでは、と思った。