2012-07-13

『プンサンケ』クロスレビュー 「沈黙の意味」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

ソウルとピョンヤン
その距離を3時間以内で往復して
依頼されたものを運ぶ謎の男。
往復して届けられるのは、
ビデオメッセージや手紙、時には幼い子供。

北と南。
あまりにも環境の異なる中で生きる人々。
一緒に生きていた家族であっても
ビデオメッセージを送る側と受け取る側それぞれに
あふれ出る感情の違いが切なくて痛い。

黙々とひたすらに走り荷物を届ける謎の男は
一切言葉を発することはない。

北の人間であるか、南の人間であるのか
ということがわからないままで
南北を行き来するその姿は、
分断された国で生きている、
行き続けてゆくという現実を哀しいほどに突きつける。

ひたむきに演じるユン・ゲサンの表情が無言の叫びを強く響かせる。
北でも南でもない。
ただの人間であるのだとでも言うように。

長く続く国の分断。
その国で生きているということ、
現実と向き合いその国で創作活動を続けていくには、
避けられないテーマなのか。

それが、永遠に超えられないテーマであるとでもいうように、
ラストで謎の男は走り高跳びで軽々と38度線を飛び越える。
たくさんの人が血と涙を流し、
引き裂かれ、大きな悲しみとともに
北と南の領地の争いで分断された国。
ほんのひとっ飛びで越えられるような距離は
争いがいかに愚かであることかと思わせる。

しかし、謎の男は命を落とす。
統一は永遠の「願い」でしかないのか・・・

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p0818


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Reki

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