消え入りそうなほどの透明感とやさしい色合い。
描かれているのは、一目みれば思わず口元がゆるんでしまうような
かわいらしい「子どもたち」。絵本画家「いわさきちひろ」を知らなくても、
彼女の絵を目にしたことのない人はそういないのではないだろうか。
そのどこまでもでやさしい絵の世界からは想像できないほど、
彼女の人生は波乱に満ちていた。望まぬ結婚、離婚、
家出同然での単身上京、仕事のない日々…。
それでもちひろが描き続けたのは、
生涯を掛けて挑むテーマがあったから。
"絵本を見た子どもが、
大きくなってもわすれずに
心のどこかにとどめておいてくれて、
何か人生のかなしいときや
絶望的になったときに、
その絵本のやさしい世界を
ちょっとでも思い出して心をなごませてくれたら"
彼女が願ってやまなかったのは、
「子ども」をあらゆる苦しみから守り、
やさしい世界で包み込みたい、
ということ。
いっぽうで、"三十年来、私はこんなに人を愛したことはないもの"
と語る夫・善明との出逢いや恋愛エピソード、貴重な原画の数々は
この映画で初めて明かされる、大きな見所のひとつ。
苦しみを乗り越え、自分の思いをつらぬき、人を愛する、
そこから生まれる「やさしさ」がある。
この天才画家の知られざる愛と不屈の姿から、
みなさんはどんなメッセージを受け取るだろうか。