私が坂口恭平という人を知ったのは、
去年たまたま図書館で手に取った『隅田川のエジソン』という本。
読んだら、何だか新しい価値観に目からウロコをはがされたような気持ちになった。
その後、震災と原発事故が起き、住む場所や電力についていろいろと考えるようになると、
ますますソーラーパネルを付けた「0円ハウス」に興味が向いた。
『TOKYO 0円ハウス0円生活』『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』と読み進み、
断捨離したくなるほど持っている物たち、いつでもいくらでも使える電気なんて
必要ないのかもと思うようになった。
そんな時にこの映画を観た。
映画の中の坂口恭平さんは、「師匠」に怒られてもめげない熱い人。
こどものように嬉々として柱に釘を打ち、窓のためにベニヤに丸い穴を開ける。
最初は気難しそうに見えた「師匠」もだんだん引き込まれていく。
協力して物を創る楽しさが、見ている方にも伝わって来る。
こうして身の丈に合った巣のような家は、材料費二万六千円で出来上がった。
でも、この車輪ではトラックじゃないと遠くには運べないし、食事は毎回宅配ピザ?
現実的な私にはそのことが気がかりだ。
震災後、故郷の熊本に移って受け入れた避難者の態度に
「人間がどうにかなっている」と呟く彼に、今後も期待しよう。