■前もってあらすじを読み、「このありがちなストーリーをどうひっくり返してくれるのか」と期待して鑑賞していたが、ありがちどころか中盤にオチが見えてしまい、正直スリラーものとして鑑賞するには物足りなかった。
レディースコミックや昼ドラでこのテのストーリーの耐性がつきすぎたのか私。
■しかし、ゴージャスなキャストと、みずみずしいカメラワーク、そしてアルモドバル特有のカラフルさで、深みのある「美しさ」がこれでもかと映し出されていた。
ためいきがでちゃう。
セックスのシーンでは、むんむんとしたニオイまでも伝わってくるかのよう。それなのに不思議といやらしさがなくアッサリしている。
「こっ、これが、ラテンのセックス…オウ、バンデラス…」と見入ってしまったのはここだけの秘密。
■“リアリティーのない昼ドラ仕様のストーリー”と、“リアルで美しい映像“という相反するモノが組合わさると、なぜか愛らしくファニーな映画になる。
この映画の魅力について、ちまたでは「変態」「倒錯」「衝撃」「刺激的」「エロス」「純愛」というコピーで売っているようだ。
が、私にとってはそういうことに注目させられる映画ではなかった。
だってもっとエロ変態で倒錯している衝撃的な映像作品は他にたくさんある。
「純愛」というよりも「復讐」がテーマであり「人間の意志の強さ」を表していたし。
私がこの映画に感じた魅力とは「アルモドバル監督ってキャワイイ☆」である。
監督のかわいさが、作品全体を皮膚のようにコーティングしていた。
監督もかわいいが、この映画の主人公の天才医師もかわいい。
ふたりの共通点であるかわいさは、「これが作りたいんだから!もう他の事なんてどうでもいいんだから!」という一生懸命さと、自分の作品への愛情から来ているに違いない。
もう1度観たいほどに、監督が母性本能をくすぐってくる作品だった。