2012-02-17

[映画]『ヒミズ』鑑賞(最後まで子供のままにすること) このエントリーを含むはてなブックマーク 

宇多丸さんが「茶沢さんの家庭まで異常にすることで矮小化してしまう可能性が(大意)」と言っていたが、震災のような変事に生き延びることにおいて「子供がいらない」という選択が溢れる異常さは出てた。異常すぎて実際にはいないんだろうけど、でも有り得るような。近年、平時でもヨユーで殺されてるけど。

原作からの改変部分もまったく気にならず、茶沢さんが躁気味とか、夜野がおじさんでも違和感なくむしろアガる。震災風景をどうとらえるかで評価が分かれるが、いまあの現状であの画を収めておかないのは映画監督として、嘘になるんじゃないのかな。テーマとして利用しようとすると痛い目を喰らう禁忌を、心象風景としても、「子供がいらなくなる」という飛んだ設定としても着地がお上手。後半に向けてやや退屈なのは、原作を踏襲しすぎだったという変な諸刃の剣が刺さってて、例の「衝撃の結末」の改変は原作大好き派も初めて観る派も巻き込んでのミラクルかと。直前の住田と茶沢さんがセックスなしで(原作では確かしてた)、肉体関係もないまま将来を想像するのがあまりにも切ない。彼らは最後まで「子供のまま」にしておいたという判断も、この日本の未来を子供に託したいという、新たなテーマに沿っていて終始正しかった。

『恋の罪』では水野美紀が主役のはずが、監督の嫁がほぼ主役。しかももうあまりにも古めかしい演劇のような演出や演技が続き、いつになくカオスにな展開で(ラスト15分くらい完璧蛇足だし)あーもー、どーしよーな気持ちを折畳んでくれたのが『ヒミズ』でした。これで次回も観に行ける。その嫁さんも出てるんだけど、台詞が一言くらいでその判断も本当正しい。園子温の嗅覚における判断って、いま一番凄いんじゃないのかな。主演ふたりも一枚岩っぽいけど、文句無しに危ない。上手い子役って増えたけど、危ない俳優って減ったので、これも要注目。

それと最近、観る映画が偶然、宇多丸のシネマハスラーと被るんだけど。『J・エドガー』とかイーストウッドの優等生じいさんの臭いがキツ過ぎて全然だったから、こういう偶然もちょっと考えもの。『ミルク』や『シングルマン』と共通項を述べてたけど、全然だよ。セクシュアリティに依って意識がない人間がああいうの撮っても全然駄目。『ヒミズ』全然関係ないし。ああもう。

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ハセガワアユム(MU)

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“MUというユニットで劇作・演出をやってます。ゲストブロガーとして、稚拙ながら映画や音楽、雑感のつぶやきを投稿して行く感じになります。演劇用語もちらほら出るかもしれませんが、遠慮なく訊いて下さい。演劇界外の方ともコミットしたい気持ちですので、どうぞよろしく。 ”