2012-02-11

「【お詫び】『卵の番人』上映作品変更のお知らせ」 トーキョーノーザンライツフェスティバル2012 作品紹介 File.15 『酔いどれ詩人になるまえに』 このエントリーを含むはてなブックマーク 

【お詫び】 『卵の番人』 上映作品変更のお知らせ
13日(11:30~)と16日(21:15~)に上映予定の『卵の番人』(1995年/ノルウェー作品)におきまして、上映フィルムにトラブルが発生したため、上映が不可能な事態となりました。貴重なベント・ハーメルのメジャー・デビュー作品を楽しみにしていらっしゃった皆様には大変に申し訳なく、心からお詫び申し上げます。
なお、本作を予定しておりました時間帯につきましては、チャールズ・ブコウスキーの自伝的小説をベント・ハーメル監督が映画化した『酔いどれ詩人になるまえに』(2005)を上映いたします。


『酔いどれ詩人になるまえに』
■ 原題:Factotum
■ 監督:ベント・ハーメル(Bent Hamer)
■ 原作:チャールズ・ブコウスキー「勝手に生きろ!」
■ 出演:マット・ディロン/リリー・テイラー/マリサ・トメイ/フィッシャー・スティーヴンス
■ 2005年 ノルウェー/アメリカ/ドイツ/フランス/イタリア ■ 94min ■ 言語:English

【ストーリー】
アメリカのある街で、ヘンリー・チナスキーは、仕事中に脱け出しては酒を飲んでクビになる生活を続けている。住む家もなく、様々な職に就くがどれも長続きしない。そんなどうしようもなく荒れた生活のなかでも、彼はたえず言葉を紡ぎ、詩を創り、そして原稿を出版社に送り続けることだけはやめない。出版社からは見向きもされないが、彼は今日も律儀に原稿をポストに突っ込んでは酒を飲む。
そんなある日、バーで出会ったジャンという女の部屋に転がり込んだチナスキーは、彼女と共にますます自堕落な日々に溺れていくことになる…。

【解説】
原作は、今も熱狂的なカルト的人気を誇る詩人のチャールズ・ブコウスキーの自伝的小説『勝手に生きろ!』。実際に、ほとんど一生の間飲んだくれであった無頼の詩人を演じるには、端正すぎると思われた主役のマット・ディロンが、ブコウスキーの姿そのままにスクリーンに甦り、世界中のうるさいブコウスキーファンをも唸らせた作品である。
映画は、作家として芽が出る前の「未だ何者でもない」ブコウスキーの、酒と女に溺れ、しがない肉体労働さえも続かなかった時期を描いている。それは不幸な子供時代を送り、40歳を過ぎてから世界的な人気作家となっていくブコウスキーの人生のなかでは一番映画になりにくい時期といえよう。ブコウフキーの自伝的小説の映画化を熱望していたベント・ハーメル監督が、あえて選んだのが、その時期であったことに注目すると興味深い。
いつまで続くかと思われる単調でつまらない仕事と荒んだ日常。そのなかに身を浸しながら、黙々と詩作を続け、原稿を日々ポストに投げ込み続ける、その繰り返しの中にほのかに漂ってくるユーモア。これは、まさに『卵の番人』から続くベント・ハーメルの世界そのものである。無頼派詩人ブコウスキー、二枚目俳優マット・ディロン、北欧のアート映画監督ベント・ハーメル、奇跡の出会いが生み出したといってよい作品だろう。
映画の中ではとうとう定職に就けなかったチナスキーだが、実際のブコウフスキーは映画のストーリーが終わった直後にあたる32歳で郵便局員となり、働きながら創作活動を続け、作家活動に専念できるようになったのは50歳を過ぎてからであった。
「人間なんて野菜だ。俺だってそうだ。自分がどんな野菜かわからんが。気分としてはカブだ。」(チャールズ・ブコウスキー『パルプ』[柴田元幸訳/新潮社刊]より)(雨宮)

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