2012-01-02

『ヒミズ』クロスレビュー:「光」をみせて このエントリーを含むはてなブックマーク 

若者には未来がある。
自分で、可能性を捨ててはダメだ。
諦めるな、立ち上がれ。
愛される事に疑いを持つな。
だって、私たちは一輪の花。
光の方へぐんぐんのび、綺麗に咲き誇る一輪の花だから。

普通(ふつう)とは、特筆すべき属性を持たない状態のこと。
そんな普通の大人になりたいと願う少年、住田は貸しボート屋の息子。
しかし、息子と呼ばれるには程遠い、粗悪な家庭環境で15年間育てられた。
そんな彼を傍で見守り、恋心を抱く少女、茶沢。
一見幸せそうに見えるが、彼女の家庭もまたひどい有様だった。

静かにこの生活を保ちながら、そして立派な人間になりたいと願う住田。それとは、真逆で、うっとおしいほどの強烈な言葉、態度、表情で愛されたいと強く願う茶沢。
まるで反発し合う磁石のようにそりが合わない二人。だが、根底にある「愛されたい」という感情が二人の心を通じさせたのではないだろうか。

原作は、「行け!稲中卓球部」でおなじみ古谷実。そして監督は、今をときめく園子温。
残忍なまでの暴力描写のなかからみえる、人々の葛藤や様々な思い。
目を背けたくなる現実への恐怖。
そのなかから微かに感じる未来への希望。

いま何をすべきだろう、私は一体何者なんだろう。
そんな道程で彷徨う人に観てもらいたい一本である。

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Ayako Tachihara

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