「冷たい熱帯魚」「恋の罪」同様、「ヒミズ」の中にもどこか暗い雰囲気が漂い、
詩の絶唱がされているシーンでは「愛のむきだし」を彷彿とさせ、
園子温ファンにはまず「お」、と目を引くところがある。
だがしかし、園子温のファンか否かは関係なく、
「自分を奮い立たせたい」
「今の状況でどうすれば良いかがわからない」
なんて困っている人に、是非一人で見に行ってもらいたい。
救いのない展開が続き、自分が何者なのか分からない
何かしたいのにどうすれば良いかわからない
中学生独特とも言える、でも大人でもどこかで抱える感情を抱きながら
主人公の住田は日々を過ごしていく。
この映画の中には3月11日に起きた震災の被災地の映像が度々出てくる。
どうすれば良いのだろう、という住田の気持ちは、
震災を迎えた後に被災地の人たちに何ができるのだろう、
と考えた私達ともどこか重なってみえる。
ボートを貸して平穏な日々を迎えたいだけなのに、次々に非日常に巻き込まれていく。
絶望しか見えない、そんな中で一つの希望が景子だった。
最初は景子に冷たくあたる住田だったが、
住田を守りたいという一心で成長していく景子に住田の心は動かされていく。
ラスト15分
劇中でほとんど笑顔を見せなかった住田の笑顔は今までの絶望を感じさせず、
見ているこちらが泣きたくなるほど幸せに満ちている。
二人の小さな、まだ考えも幼い中学生が希望へと、未来へと向かって行く様は
映画を見終わった後も、たった今も頭から離れないまま残っている。