2008-04-13

SEXとポルノ このエントリーを含むはてなブックマーク 

まだ日本がバブル景気に浮かれていた1989年~90年にかけてちょうど東ドイツで暮らしていました。
1989年11月9日にベルリンの壁が崩れたとき、雪崩のように東ドイツの国民が西ドイツに押し寄せたことは誰もが知る歴史的事実となっています。彼らが戻ってくるときの荷物の中にさっそくエロ本が入っていたことを鮮明に覚えています。そのときの貨幣価値からしたら西ドイツのポルノショップで売られていたエロ本はかなり高かったはず、そこまでしてエロ本を買うとは相当「SEX」に飢えていた印象を持ちました。
しかし、実際に飢えていたのは「SEX」ではなくて、「ポルノ」だったことがこの映画を観て分かりました。

このドキュメンタリーは東西ドイツをSEXという視点で軽妙かつ丁寧に検証しながらなかなか楽しませてくれます。
どこまでが真実なのか分かりませんが、東ドイツでは若くして出産する女性が多く、離婚も多く、女性の社会進出などは実感しました。さすがに「オルガスム達成率が高い」ことまでは実感していませんが、「今思えば、そういうことだったのか」ということがチョクチョク思い出されました。

約1年間東ドイツで暮らした結果、西ドイツと東ドイツとどちらの生活を望むかと言われれば、間違いなく西ドイツですが、必ずしも何もかも西側の方が良かったとか、すべてにおいて西側が進んでいたなどということはないわけです。けど、多くの人が東の生活は暗く惨めな印象を持っているようなので、それを覆す意味で痛快です。

今でこそアホみたいに「スローライフ」なんて言葉を使用するようになっていますが、当時の日本は時任三郎がCMで「24時間闘えますか?」なんて恥ずかしげもなく言っていた時代です。
そもそも競争社会の中で忙しいとSEXなんかしている暇は少なくなると思うし、消費社会の中で娯楽が豊富になってもSEXなんかしなくなり、SEXが純粋な娯楽に組み込まれる結果ポルノ産業が発達するわけですね。
貧しく不自由なはずの東ドイツの生活は究極の「スローライフ」でした。消費するものはなくても、経済的な不安や残業もなく、のんびりと充実した性生活を送れたわけですね。

どっちが幸福なのかはその人次第なのでしょうから、観終わった後、議論するのにとても面白いネタを提供してくれる映画です。

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yoshinori tsukuda

ゲストブロガー

yoshinori tsukuda

“アートと呼ばれているモノやコトについて、時々考えます。”