クラシック音楽にそもそも興味がなく、彼の名前を聞くのも初めて。ポスターに写るアンニュイな雰囲気がなんとなく気になって観ることになりました。
グールドに惹かれてしまったのは、やはり「変わっている」ということ。真夏に手袋&分厚いコートでの完全装備や演奏する時には椅子の脚をわざわざ短く切った物を使用するという強いこだわり。腰を曲げて歌いながらピアノを弾く姿は見ているこっち側が「弾きにくいだろー!」ツッコミ入れたくなるほどです。
印象的なのは、やはり彼の持つ強烈なパーソナリティと繊細で複雑な心の持ち主であったということでしょうか。大勢の人と関わることよりも、自分の内面と向き合う時間を大切にし、信念を貫いて、演奏会やレコード録音・ラジオ編集などに力を注いだこと。美しいメロディーを奏でる側面には、常に自分自身と対話し続け、彼なりの解釈がそこにはあった。
また、彼との恋愛を語った元恋人たちのインタビューからは「好きだったの。でも彼にはついていけない」という彼の独自性が垣間見れます。
このドキュメンタリーは天才ピアニストとしてのスターな一面だけでなく、人間関係の不器用さ、家族への豊かな愛情、夜行性や神経質で孤独な部分など様々な顔をみせてくれます。彼への探究心が高まりグレン・グールドのCDを聞いてみたり、また自分自身との対話を楽しむきっかけとなりました。