2011-10-22

『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』クロスレビュー:10本の指のポリフォニー このエントリーを含むはてなブックマーク 

バッハの曲って、計算されつくした完成形で、モーツアルトのように制約から解き放たれて自由に歌うイメージないんですが、思わず睡魔に誘われる「ゴルトベルク変奏曲」でさえ、湧き上がる喜びに踊りだしそうな、溌剌と生命力に満ちた演奏です。それはもう、耳の肥えた評論家でなくとも、私のような音楽素人にもわかるほど・・・
低い椅子に座って前かがみで演奏する演奏スタイルも独創的ですが、粒だった指遣いというか、10本の指がまったく独立して対等に、10声のポリフォニーを奏でているかのようです。
両親に溺愛された少年時代、20代のソ連でのセンセーショナルな演奏旅行、突然の演奏会からの引退・・・20世紀を駆け抜けたかのようなわずか50年の彼の生涯を、自身の実写ムービーとインタビュー映像でつなぎます。
サブタイトルからは、脚色満載の「芸術家の切ないラブストーりーもの」が連想されますが、これ、100パーセントノンフィクションなので、勘違いしてきてしまった人にとっては、恋の相手だったご年配の女性たちの懐旧談とか、拍子抜けかも?
地味なドキュメンタリーであることをわかって観るぶんにはとても良質な作品だと思います。
一目散に家に帰ってCDを聞きたくなるはず、です。

キーワード:


コメント(0)


kerakuten

ゲストブロガー

kerakuten

“最近になって、月に15本くらい映画をみるようになりました。原作本の感想とあわせて、ブログに書き込んでいます。 ”