2008-04-11

MEAT BEAT MANIFESTOへの愛情 このエントリーを含むはてなブックマーク 

MEAT BEAT MANIFESTOの新譜が到着した。

世界的(?)ギタリスト布袋寅泰の言葉を借りれば
「デカイ音で聴いてるとスゴイ。
なにがマトモなんだかわからなくなる。
アプローチの仕方が新しいね。
ヒップ・ホップに似てるけど、俺にはロックンロールに聴こえるよ」
まさに初期の作品はそうである。

何がかっこ良かったかというと
ヒップホップに通じるドラムと
白人によるラップ、
容赦ないサンプリングと
ズタズタに切り刻まれたカットアップ/コラージュ、
王道のサウンドにノイズが加わり
エレクトリックな電脳ビートが脳ミソを掻き回す。

そしてそのサウンドはセカンドアルバム(サードとも呼べる?)
「99%」で完結し、「サティライコン」
からまた新たな音楽性へと発展していく。

出会ってから10数年経つが
彼らのSTRAP DOWNとGOD O.D.の衝撃は今でも色褪せない。
僕にとって衝撃的で重要な作品はこの頃(中学生)
一気に出会っている。
ノイバウテンのタンツデビル、
SPKのスローガン、
そしてMBMのストラップダウン。
所謂後頭部をハンマーで叩かれた衝撃とはこのことである。

SUCKHARDという限定1500枚のリリースシングルでデビューし、
ファーストアルバムのマスターテープが火事で燃えてしまうという
アクシデントを乗り越えリリースされたファーストアルバム
「STORM THE STUDIO」。
JB、デヴィッドボウイ、COLOURBOX(M/A/R/R/S)、
クラフトワーク、プロパガンダなどサンプリング。
LPでは2枚組のリリースで
LP1-A面がGOD O.D.Part1~4、
LP1-B面がRe-animator Part1~4、
LP2-A面がStrap Down Part1~3(CD化の際、Part3がカット)、
LP2-B面がI Got The Fear Part1~4
各面で世界が違うというか、
オリジナルアルバムでありながら
Remixという解釈もとれるかなりコンセプチャルな構成。
ファーストアルバムが火事によって紛失したため、
それまでのシングルをズタズタにして収録されたといわれる
上記のStorm The Studio。
確かに先行シングルの
GOD O.D.(カップリング:Marrs Needs Woman)
Strap Downを収録しているが
それ以前にリリースされている
GenocideはGod O.D.、
Give Your Body Its FreedomはStrap Downの元になっている
(両者Armed Audio Warfareに収録)。
MBMの曲の中では曲名が違うが、歌詞が同じであったり
バッキングが同じだったりということがしばしばあり、
99%に収録された「Psyche Out」もGenocideとGod O.D.
がゴッタ煮にされたような曲である
(このアルバムから後にシャフトや水田逸人を手がける
ジョニー・ステファンスが参加)。

僕が18くらいの頃に
デジロックと呼ばれるムーブメントが起き、
プロディジー、ケミカルブラザーズ、ファットボーイスリム、
アンダーワールドの台頭により再び、
MBMにスポットライトが当たっていた。
ビッグビート、ブレイクビーツの元祖など呼ばれていた。
アンディ・ウェザウォールやオービタル、AFXなど
リミキサーに起用していたため「先見の明」で
そういう括りにされていたのかもしれないし
サティライコンあたりではオービタやシェイメン、
コンソーリデイティッドらと
アシッドハウスみたいな類に扱われたからかもしれないが
正直いってMBMをテクノの人と思ったことは一度もないし
ダヴやダンスミュージックの先駆けとも思ったことはない。

やはり彼らの根底にあるのはロックンロールだと思う。
ボディミュージックやインダストリアルの要素を持ちながら
TGやフィータス、キャブスなどの後継者的でもあり
NINやPIGなどへの橋渡し的存在でもあったが
マークスチュワート的なダヴやノイズプロダクションも垣間見え
とにかくジャンル分けなどできない音楽性だった。

Storm The Studio、Armed Audio Warfareと続いた
ディストーションのかかったエレクトリックビートや
高速BPM&ラップ、DJ的発想とファンクやR&Rの要素を持つ音楽は
予測不能の展開を見せていた。
ところが99%をリリースする頃には整合性が取られ
規格外のはみ出した爆発的なエネルギーが
「巧さ」へと変換され、随分洗練された音楽へ変貌。
ほぼ同時期のシングル曲、
Dog Star ManやDV8はまだまだブっ飛んでいたが
Helter SkelterやRadio Babylonがリリースされる頃には
すっかりテクノ一派の扱いを受けていた。

サティライコンで攻撃的なサウンドに終わりを告げ、
2枚組アルバム「サブリミナル・サンドウィッチ」では
完全に当初あった初期衝動の塊は薄れていた。
その後、所謂ブレイクビーツを取り入れたリミックスワークは
多方面で聴かれ、あるところではデヴィッドボウイ、
また彼らに影響を与えていそうなデペッシュモードや
コイルのリミックス、
そしてナイン・インチ・ネイルズへのリミックスへ。
ズ太いドラミングではあるが
何処か精細を欠いてしまった。
CONSOLIDATEDのマイク・ピステルを起用し
初期のサウンドを取り戻したような
「アクチュアルサウンド&ヴォイシズ」も
群を抜いて、亜流の溢れる今では飛び抜けた独自性は薄く
98年にリリースされた多くのアルバムの中に埋もれていった。

数年前にMBMが来日したときに、
GOD O.D.などを演奏しているのを知り
行かなかった自分を恨んだ。
Live'05と名付けられその後、MBM.ストアでCDとDVDが購入できた。
Helter Skelterなど初期の名曲が並ぶセットリストに鳥肌が立ち、
翌年には初期のレア・未発表曲がリリース。
PERNNIAL DIVIDEはヴォーカルがカットされ
インストバージョンとなってしまったのが残念だったが
XTCのアンディ・パートリッジがプロデュースした初期シングルが
収録されたのは嬉しかった。

RUOK以降、ジャズや更にダヴ色の強い作品が多くなり
最早、初期のMBMと比べるのは愚問。

<span style="color:#ff0000"><strong><span class="large">さて、</span></strong></span>

嬉しいことに発売日とほぼ同じ日に聴けた
新作AUTOTIMMUNE.

アクチュアルサウンドアンドヴォイシズにて
藤井麻輝さんがレビューで
『ついに前線に復帰した分解/再構築のオリジネーター』
と前置きしたうえで
結局クラスターやDAFなどのオリジネーターを
賞賛する感覚にかなり近い。
ひょっとすると分解、再構築の可能性は
彼ら自身の活動によって終結したのかも。
とくくっていた。

だからこそ彼らは
フリースタイルのジャムセッションに近いスタイルに
新機軸を見いだしているのかもしれない。
初期の壊れた姿がここにないのは
決して淋しいことではない。
そして久しぶりのボーカルトラックの多さに驚く。
黒人によるラップが大半だけれど
ジャックデンジャーズが唄う
先行シングル『SOLID WASTE』で
やはり自分は彼の声が好きなのだと再認識した。
RUOKやAT THE CENTERと方向性は変わらないが
バキバキとはいわないものの
ジトジトしたビキビキのノイズがあったり
前述のアクチュアル~以来の攻撃的な一枚であることは違いない。
この危うさが良いのかも…。

最後に。
ジャックデンジャーズが以前クラフトワークのライブを見て
凄く良かったが新曲がいまいちで
こんな風になって欲しかったという
理想クラフトワークの曲をアクチュアル~に
収録していた。

実はSCHWA CATの冴えないけど金太郎飴の
ディストーションかかった
エレクトリックビートや
大まかな曲の流れは
MBMがこうであってくれたらな、という思いが
少なからず入っている。
決して見切りをつけた意味合いではなく
最上級の敬意であるので
ご理解いただきたいのです。

因みにジャックデンジャーズのソロ、
MUSIC FOR PLANETARIUMも注文しちゃった。
何故か送料かからないらしいっす。

Strap Down


Meat Beat Manifesto live in Nighttown 1989


I GOT THE FEAR


99%



キーワード:


コメント(0)


悪澤【WARSZAWA】

ゲストブロガー

悪澤【WARSZAWA】

“http://myspace.com/schwacat”