自劇団のことで恐縮ですが「MU(ムー)」という、演劇業界では稀な、正真正銘の劇団ひとりをやってきました。
主宰・脚本・演出・企画・制作・キャスティング・デザイン・編集・・・etc、挙げたらキリがありません。ハセガワアユムは何人いるのか?って噂されてる横で、ふつうの顔してフライヤーを折込んだりしてました(笑) 公演毎に素敵なキャストやスタッフに恵まれて来ましたが、正直、或る程度小劇場界で認知されつつ、動員が1000人を越えたあたりから、公演規模が大きくなり、体力的・精神的にもしんどくなって来たのも事実です。
実は、ぼくは20代前半にギャグ劇団をシリアスなことがやりたくなって解散してます。仲間と友人を同時に失った、その傷や反省があまりにも深く、呪いのような日々が続き、そのまま透明になってしまうことを終始怯えてました。それから時間とともに、体中の血液を全部取り替えていくように、友人や知人の人間関係をほとんど変えました。それは自分が本気になればなるほど自然と変わって行ったし、新しい出会いに何度も救われたからです。その人間関係が財産だからこそ劇団をふたたびやるときに出した結論は、劇団や責任は集団で分かち合うのではなく、全部、自分ひとりで引き受ける覚悟をもつこと、それでMUを始めました。
集団を維持する事だけに固持し疲弊して行く劇団を横目に「シンプルである強み」をもって邁進して来ました。だけど、それと完全に妄想ではあるんですが、「劇団に入れてくれって言われるくらい、自分の作品を愛してる人が現れない作品が、果たしてどこまで届くのか」と、耳鳴りのようにシビアな声も貼り付いてもいました。
これからMUを、どう舵を取って行くのか。劇団を大きくして行くなら、また仲間が必要だという結論にも差し掛かっていた訳です。
それで、ここ1年以上、MUに常連で関わってもらっている、渡辺まのちゃんと古屋敷悠くんとは、お互いに相思相愛確信犯だと判りつつ「そこだけは」と、勝手に大人の線を引いていたのですが、ついに瓦解しました。二人の存在はそれくらい大きくなっていたし、そんな風に自分の壁が壊れるだなんて、想像もつかなかった。でも、そうやって何枚も壁を叩き壊してここまでやって来たのがMUなんだよね。俳優としても伸びしろのある二人、なによりセンスが最重要なMUで、大信頼のメンバーとして迎えます。
毎公演、出演者をキャスティングする際に「バンドのように」と執り行っていましたが、まさか自分がバンドを組もうとは。
グレイトフル・デッドみたく多過ぎて誰がメンバーか判んなくて、有機的に「出演者・関わったみんながMU」って空気でやって来ましたが、その空気も残しつつ、核はこの3人でやっていきます。バンドだしね、3人がいいよ。
年内は映画版の『無い光』を撮影して、来年2月下北沢駅前劇場の新作公演で、下北沢演劇祭に参加します。この夏も、そのためのオーディションで連日動いていますが、快調です。
どうぞ、新しいMUをよろしく御願いします。
MU主宰・ハセガワアユム
http://www.mu-web.net/
http://twitter.com/ayumumumu
■写真左より、不肖ハセガワアユム、古屋敷悠、渡辺まの。