曽我部恵一の2011年の新譜であり、久々のソロアルバム『PINK』のツアーを納めたライブ盤。オンラインのみの販売だが14曲で1500円という破格。またこのツアー、ぼくも渋谷で見てたんだけど、本当に良かった。いろんな名義で活動しているが、このツアーの歌い方はどのモードのときよりもフラットで力強かった。曽我部恵一BANDのときみたくアゲ過ぎず、サニーデイや弾き語りのときみたくクール過ぎず、ちょうどよい温度。
バンドメンバーは横山裕章(ピアノ)とヤマグチユキノリ(ハモンドオルガン)の絡みが贅沢なのと、北山ゆう子(ドラム)のコーラス、木暮晋也(ギター)がグイグイ食い込んで来る感じが、アルバムの曲ももちろん、往年の曲達も新鮮に響かせてた。特に囁くように歌っていた"ギター"や"パリへ行ったことがあるかい?"が逞しく歌われることでスケールアップしてかなり好み。アルバム曲でソウルセットっぽいラップだった”愛と苦しみでいっぱい”は、正直ライブでどうやるんだと心配していたが、何故かすごいファンキーな歌い方になっててギターも容赦なく煽ってるしで化けまくってた(笑) "朝日のあたる街"でも判るとおり、女性コーラスが似合うのでもっとやって欲しい。
ファンの間では曽我部恵一のエレクトロニックな曲は「弾き語りの方が実はよい」というジンクスがあるんだけど(例・『瞬間と永遠』収録の"もしも"など)、アルバムのタイトル曲『PINK』もそのジンクス通り、ライブでは弾き語りだったので白眉の出来だった。豪華なバンドセッションの合間に一瞬だけ訪れて「からっぽの朝が来てきみを捕まえてしまう/その頃ぼくは何も知らずに歌ってる/ぼくらはいつでもすれ違ってしまう/ピンクの夢を見ている間に」なんて歌ってしまう。まあそんなピンクの夢がパッケージされてます。
画的にも映えるバンドだったので、DVDも出すべきかと。収録されなかった曲で聴きたい曲も沢山あるし。前半の"がるそん"や"レモン"の多福感は全盛期のオザケンみたいだったので、俺みたいなおじさんの目にはうっすら涙が(笑) 震災後、初めてライブを楽しめた夜だった。
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