1990年に米西海岸でグラフィティ・ライターとなった私は、この「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」の日本公開を心待ちにし、先のアカデミー賞授賞式でのバンクシーの動向も興味深く見守った。そしてついにこの作品を観ることが出来た。
その率直な感想は「半分期待外れ」「半分期待以上」とういうものだった。覆面ガードの固いバンクシーの、秘密のベールに包まれたハードコアな作品制作シーンを十分に堪能出来ると思っていた私にとって、そういう意味では期待外れだった。ところが映画は一転、アート業界の裏側を暴き始める。エセ・アーティストによるメディアの操作、それに乗せられて贋作に群がる観客達の姿は、共に滑稽だ。バンクシーは1960年代の後半に生まれたグラフィティ・アート史上において最もすぐれた才能の持ち主であると同時に、映像作家としても彼のアート作品に通じる皮肉とユーモアに溢れるセンスを見せつけてくれた。
そういう意味でこの作品は期待以上だった。今後も彼の活動から目が離せない。
GIGAONE
(山口 洋介)