『BIUTIFUL』。
わたしはこのタイトルが気になって仕方がなかった。
どうみても"BEAUTIFUL"のミススペルである。
このタイトルに出会ったのは、違う映画の試写会に行った時にもらったフライヤー。
その瞬間から、その時観るはずだった映画そっちのけで気になりだしてしまったのだった。
舞台はスペイン・バルセロナ。
主人公はハビエル・バルデム演じるウスバル。小学生の女の子と男の子の父親。
なんとなくうだつの上がらなさそうな中年男。躁鬱状態を繰り返す元妻に手を焼く。
不法移民の不法労働斡旋に手を貸し、霊媒師もどき(?)のようなことをやったかと思えば
麻薬取引の連中と共に警察に連行されたりもしてしまう。
この人はなんなんだ。街の便利屋さんなのか?
ある日体の不調を覚えたウスバルは病院へ行く。そこで受けた、余命2ヶ月宣告。
人の死は避けては通れない。だけど残された時間が、余りにも短すぎる。
ウスバルの部屋からは建設中のサグラダ・ファミリアが見える。
かと思えば、目の前の道には死体が転がっている。
光と影、陰と陽。両極端な街並み。ウスバルは目を背ける。
今は日が当たっていても、いつかその日は確実に訪れるのだから。
残された時間で、特に子供たちに何か残そうと奔走しているようには見えない。
むしろ自分の仕事仲間(と呼ぶのかどうか)たちのために動き回っている。
そんな仲間を思ってやったことが、とんでもない悲劇を招く。
因果応報。カルマ。
いいことをしたらいいことが返ってきて、悪いことをしたら悪いことが返ってくる。
そんなもの、この男にはさっぱり当てはまらない。むしろ真逆だ。
思いっきり裏切られたりもする。
人の幸せって、なんだろう。
自分の物差しで計った幸せの価値が、他の人にも当てはまるとは限らない。
人から見て間違っていたとしても、自分がそれでいいと思っているなら、きっとそれはそれで幸せなはず。
『BIUTIFUL』。
間違ってるって、いつか誰かが教えてくれるのだろうか。
たいていこの手の映画はわたしには難しすぎて、正直これだってあんまりよく理解できてない。
不器用に生きている男の、無骨な生き様。若干へヴィ。
死ぬ間際の白鳥は、最も美しい声で歌うという。鳥は死ぬ間際が一番美しい。
終わりよければ全てよしというけれど、その終わりは誰が見届けてくれるの?
本当によかったかどうかなんて、死んだ後の自分にはわからないよ。
「フクロウは臨終の時、毛玉を吐き出すんだよ」
冒頭とラストで繰り返されるこのセリフ。
美しい声で鳴けなかった鳥は、胸に詰まった苦しい思いを吐き出すしかないのかもしれない。