はっきり言うと、良い意味でも悪い意味でも、予想を裏切られる映画だった。
舞台がイスラエル、パレスチナであることから、人間面のぶつかり合いを私は期待していた。ストーリーは、タイトルにもある「スバル」を中心に、主人公はもとより、さまざまな人物が振り回されながら進んでいく。
登場してくる人物は、非常に多く感じるのだが、不思議とみんな個性があり、セリフが少ないにも関わらず、すごく印象に残るのだ。これが本作の最大の魅力だと思う。わたしが想像していた「感情をぶつけ合う」というような風ではなく、みんな互いにそれぞれをしっかり理解していて「感情を表さなくてもわかり合っている」ように見える。大きな家族といえば、言い過ぎかもしれないが、それぐらい心地よく登場人物達は情感豊かに生きている。
イスラエル・パレスチナと聞くと、紛争など穏やかではない先入観を持つ人はわたしだけではないと思う。しかし、このような「穏やかな日常」はたしかに存在するのだろう。
そしていま、東日本大震災の後の日本を海外から見れば、「穏やかな日常」など日本全土には存在しない、という風に見えるのではないか、と逆の立場でふと想像してしまった(このレビューを書いている時点では、少なくとも西日本は穏やかだ)。
震災で気が張り詰めているいまだからこそ、ほっこり幸せを感じたい方にお勧めしたい映画だ。