この映画の中で、一番惹きつけられたのは山羊のシーンだった。
山羊は家畜として飼われてはいるものの
生まれて数分で立ち上がり、乳を飲む。
その羊が、はぐれ、迷い、もしかしたらそこで命が終わるかも知れない。
でも、それは自然なこと。
生と死は同じようにやってくる。
その他のシーンはなぜかとても退屈だった。
人間が作り上げてきたものって、なんて不自然なのだろう、と思う。
それでも、人間はそれを引きずりながら生きて行かざるを得ない。
知恵というものと引き替えに膨大なリスクを背負った人間。
この一見害のなさそうな町に降る雨も酸性雨かもしれないし
放射能も混じっているかもしれない。
もう、戻れないんだな、と思った。
古き良き時代に戻ればいい、と言うけれど、戻ることではできないのだ。
でも、経済成長をただただ目指して生きることはもうできない。
だから、新しい価値観をつくりだす。
淡々と過ぎていく日常、
なのにじわじわと世界は見えないところで変わっていく。
でも戻る必要はない。
作り上げていく人間の力、乗り越えていく人間の力
もしそれが、人間の命題であるならば
古くもなく、ゆきすぎもしない世界をつくりだすことができるだろう。
それは「新しい調和」をもたらすだろう。
世界に。
夢を見る。
新しい夢を。
その夢のなかで
きっと
あの子羊は、また群れに戻ることが出来るんじゃないだろうか。