本編スタートと同時にハイスピードカメラによるクリアなモノクロ映像とヘンデルのアリアに乗せて描かれるプロローグが絶妙にマッチしていて最高に素晴らしい!その余りの美しさに一瞬にして作品の世界へと引きこまれました。また、トリアー監督が、自身のうつ病のリハビリとして書いたというこの物語は、人間はもちろん、癒やしの象徴であるはずの自然や動物さえも恐ろしい存在として描かれていて、混沌とした世界観を圧倒的な映像美で描きつつ、さらに女性の内にひそむ悪魔性を全面にえぐり出しており、観る者の心をわしづかみにすることでしょう。性や暴力の描写があまりにも過激で、カンヌ映画祭での上映時には賛否両論が巻き起こった問題作と聞いていますが、絵画のようにディテールまで描きこまれたかのような映像美でプログレッシブかつ複雑なまでに融合させ、人間の性欲がもたらす堕落と、性への執着心と、生きる意味を我々に重苦しいまでに問いかけてくるように思いました。