昨シーズンも終り近く、中日大島は、ウェイティング・サークルで打順を待ちながら、やおらバットをさかさに持って銃さながらに身がまえ、何ものかにねらいを定めて引き金を引く動作を演じたものだ。薄い雲がかかった空には十五夜に近い満月が鋭く輝いている。あの一瞬にはなぜかひどく感激して、涙をこらえるのが困難だったほどだ。(中略)そこには、優勝から見離されたチームの主軸打者の悲哀といったメロドラマとは異質のある感覚的な薄気味悪さがかもし出されていた。
(草野進「プロ野球好きはほんの一瞬のために球場に出かけて行き全身的な体験に身をまかす」)
引用ノック0022:中日大島
http://2boy-yakyu.blogspot.com/2010/10/0022.html