居場所を見つける為に、僕達は生きているんだ。
『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』を鑑賞した直後、私は素直にそう思えた。
本作は、あまり知られていない「アルコール依存症」の実態を描いている「闘病もの」だが、よくある大仰でお涙頂戴的な場面や、重々しい雰囲気はない。随所に挟み込まれるユーモアや個性的な登場人物たち、そして出演陣の自然な演技などのお陰で、物語は軽やかに展開していく。
どの場面も印象的だったが、なかでも主人公とその家族が交流するシーンが秀逸。闘病生活という非日常に投げ込まれたにも関わらず、なんでもない日常を過ごすかの様な和やかで優しい時間を過ごす主人公たち。その無邪気な光景が何とも言えず感動的だった。
人は誰しも悩みや苦しみを抱えている。主人公が背負った苦難は「アルコール依存症」だったが、まるごと受け入れてくれる家族が、奇跡的に、そばに居てくれた。じゃあ、もし私が「アルコール依存症」のような苦難を抱えてしまったとき、そばには誰かが居てくれるのだろうか。苦しさに悶える私を受け止めてくれるような居場所があるのか…。
まだ独り身の私は、銀幕の中で元妻や子供達と一列になって手をつなぐ主人公を心底羨ましく思いながら、両親や友人達の顔を思い浮かべて少し安心した。そして、少し優しい気持ちになって試写会場を後にした。
自分の居場所を探している人には温かい希望を与え、
既に見つけている人にはその居場所の有り難さを再確認させてくれる。
凝り固まった心を、優しく揉みほぐしてくれる佳作。