私は50歳です。
再就職の道は遥か彼方、
やっとこさ育てたこどもからも容赦ない言葉で批判され、落ち込むことも多い日々。
そんな私が、この映画のキャッチコピー『ドン底から立ち上がる』に惹かれて、
試写会に出かけました。
ルイーサは60歳。
孤独で単調な毎日。
仕事は霊園での電話番とスター女優の手伝い。
服装はいつも同じ紺のスーツ。
ストイックな生活。
誰とも関わらず、心を開くのは飼い猫ティノにだけ。
ある朝突然そのティノが死に、その日のうちにふたつの仕事も失う。
ひどい運命。
退職金もない。
手元に残ったお金ではティノの火葬もできない。
容赦ない現実。
ルイーサの見る悪夢の中で、
過去に夫と娘を亡くす痛ましい事件があったらしいことがわかって来る。
心に蓋をしてニコリともせず生真面目に、死んだようにただ生きて来たルイーサ。
ルイーサはあぶなっかしい。
世の中を知らな過ぎる。
過去にどんなことがあったのか,地下鉄にも乗ったことはないし,
エスカレーターにもしがみつくようにしてしか乗れやしない。
アルゼンチンの国民的舞台女優レオノール・マンソが演じるこのルイーサから
目が離せなくなる。
どん底のルイーサを助けてくれるのは、もっとどん底に住む片足の物乞いオラシオ。
この作品が遺作となったジャン・ピエール・レゲラスが、
懐深いオラシオを暖かく演じていてすばらしい。
ルイーサの心の蓋が.溶け始める。
スーペル・チャランゴのアコースティックな音楽が,
話に寄り添いながらも決して叙情的にならずに,ユーモラスな味付けで映画を盛り立てる。
明日からまた頑張ろうと思えて来る映画。
そう,人生を変えるのはいま!