この映画を見てよかったのは、芸術のことをこの上もなく大事に思う人たちが、日々の生活を新美術館のために奉仕し、その完成を夢見ている姿、そのリアルな姿を見ることができたことだ。
学芸員たちは、膨大なコレクションが新しい居場所を与えられ、芸術たちがまた輝きだす日を心待ちにしている。コンペを勝ち抜いた建築家は、考え抜いたプランが立ち上がり機能する日のために、忍耐強く設計のやり直しを行う。警備員は、置き去りにされたコンクリートの城のことを子供のように愛している。
そして、館長もまた、新美術館が呼吸をする日を待ち望んでいる。
だからこそ、彼は市民グループの話し合いを尊重し、美術館よりも自転車用通路の方を真っ先に考える人、機能よりも景観や歴史を重んじる人の意見に辛抱強く耳をかたむけるのだった。
その結果は? この「市民の財産」は、永遠かと思える閉鎖を見る。
見ていてもどかしいほど、果てしない議論、議論、議論。国家的なプロジェクトなのに、簡単に横やりがはいる不思議。絵画や彫刻に興味がなくても、自分たちの文化資産を大事にし、発言をやめない市民たちのこの情熱は、なんと魅力的なのだろう。
どこかでエリートたちがひっそりとプランを練り、突然「公開」され、ほんの数ヶ月で巨大な建築が立ち上がる、そんな不思議な国に住んでいると、アムステルダム美術館の長い休館こそが、偉大な作品に思えてくる。
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