スウェーデン映画の「ぼくのエリ 200歳の少女」を観て、とても詩的で情感のある映画だと思った。
暗闇に舞う雪、その雪に包まれた夜の町を見下ろす主人公の少年・オスカー。窓ガラスに映る彼の孤独な表情から映画は始まる。彼は両親が離婚したため、好きだった父親と離れ母親と暮らしている。学校では友達もいない。いじめを受けているがそのことを母親は気付いていない。毎夜、やり返す練習をしているが、そんな勇気はなく出来るはずも無い。殺人事件の新聞記事を楽しそうにスクラップしているやや屈折した少年でもある。
そんな彼が隣に越してきた黒髪で憂いにある少女・エリと出会う。夜しか姿を見せず、雪の中でも薄着で体は氷のように冷たい。タイトルからわかるように彼女はヴァンパイアである。人間とかかわらないように12歳のまま生き続ける孤独なエリとオスカーは互いに惹かれていく。少年と少女の心の距離感の初々しさがとてもよく描かれている。そして、エリがオスカーのことを想いながらも彼の血を求めてしまう衝動を必死に抑える姿がとても切ない。壁を隔てたモールス信号から、やがて互いがドアを開けて部屋に迎い入れあう。お互いにたとえ命にかかわるリスクを侵すものであっても、そのことで二人の心は結ばれる。
体裁としてはホラー映画なので血なまぐさい描写もヴァンバイアものらしい描写も多い。しかし、印象としてはとても純粋で詩的なラブストーリー。ハリウッドでのリメイクも決定しているらしいが、この情感が失われないことを望む。