1974年、ザイール(現コンゴ民主共和国)のキンシャサで開催されたモハメド・アリとジョージ・フォアマンのガチ対決は、アリの世界ヘビー級王者奪還により「キンシャサの奇跡」と呼ばれる。
この闘いと同時期に開催された歴史的ブラック・ミュージックの祭典、「ザイール’74」を追ったドキュメンタリー映画が『ソウル・パワー』だ。ソウル・ミュージック好きにはたまらないラインアップのアーティストがぞくぞくと登場し、むしろこのコンサートのほうが「キンシャサの奇跡」と呼ぶにふさわしいのではないか、と観る前から血が騒ぐ。
その期待どおり、帝王ジェームス・ブラウンの『ソウル・パワー』のオープニングで、血が沸騰して体中の細胞が踊りだす。ソウル・ミュージック最強!とぐいぐい引き込まれるが、この作品は、たんなる音楽ドキュメンタリーとして楽しめるだけではない。アフリカにルーツを求めたアフロ・アメリカン(あえてこの時代の言い方で)が、アフリカの大地と人々に再会するものがたりとしても観ることができる。
そして、黒人解放運動の最前線でアメリカ社会に吼え続けたモハメド・アリのキンシャサでの言動をカットインしながら、ザイールという不便な土地にあらゆる機材を持ち込み困難な状況からコンサートを開催するに至る裏方の様子が緊迫感を生み出し、それとは対照的に、意外とシャイでとなりのおっちゃんのようなJBや、陽気なBB・キングらアーティストたちの魅力溢れる素顔を映し出す。ハラハラどきどきしながらも、ハッピーな気分で舞い上がってしまう。
欲をいうなら、それぞれのアーティストにつき1曲ほどしか収録されていないので、コンサートすべてをいつか観てみたい。でもその前にあと何回かこの映画を観にいくだろうな。
35年以上経っているとは思えない良質なサウンドも驚き。JBの「フゥーーー!」はMJの10倍くらいパワーアップだから、ぜったいに映画館で体験すべき!