とりあえず渋い。
そして、和風テイストなヨーロッパ映画というか、箸で食べるフランス会席料理みたいな作品。ワケわかんないだろうけれども。
良く言えば不思議、悪く言ってしまうと変な作品である。
常日頃から創作料理なんていう安易な逃げを良しとはしたくないと思っているおれとしては、6:4で「変」が「不思議」を上回ってしまった。
自分ではリベラルだとは思っているのだが。
老舗の料亭のごとくこれ以上はない素材(キャスティング)で脇を固め、大人の鑑賞に十二分に応える。
なにせ、大滝秀治!と菅井きん!という日本の爺さんと婆さんといったらこの人、という2人が夫婦をやっちゃってんだから、その豪華さといったら「生うに・いくら丼」級。
その反面、若人への訴求要素は心配になるくらい皆無。
かろうじて、徳永えりがその役割を担うようにも思えるのだが、若人が萌えるタイプとはちと違う。
どちらかというとおやじから好意を寄せられてしまうタイプ。迷惑かもしれんが。
ということは、結局、やっぱり、若人へのアプローチは微塵もないのか。
少子高齢化を背景としたマーケティング戦略によるものなのかもしれんが、これはこれで潔い良い。
最近シニア層をターゲットにした映画の動員は良さそうな気もするし。
金を持っていて、時間もあって、人数も多いところにターゲットを絞ったということかもしれん。
まぁ、こういうのもいいんじゃない。
そして、さらに、この世代へのフォローは手厚い。
田中裕子と美保純でツートップを組むなんざ、気が利きすぎ。ダメ押し。これは、なんだ?例えるなら、カズとゴンのツートップに相当?。
往年の熱い想いが呼び覚まされるよなぁ。まったく。もう。
田中裕子の食堂のおばちゃんがハマり過ぎで愕然としたり、若い頃はさぞかしブイブイ言わせていたんでしょうなぁなんて風情が漂う美保純のケバいけれど女気溢れるオバサンもよかった。
こんな風にして脇役に名優をそろえ、北海道や東北の海や風景とあわせて慈味豊かにヨーロッパ映画的な深い味わいを醸し出してはいる、の、だが、しかし、メインのおじいちゃんと春の演出が演劇モードであるために映画としては大仰。
違和感ありまくりで、上手く馴染まず、和洋折衷の創作料理に止まってしまった。
素朴かつ頑固一徹なおじいちゃんの演出が濃すぎる。幼児が駄々をこねているようにしか見えないのはちょっと。
ここまで派手にやらなくともおじいちゃんの気質は伝わると思う。
それと、春。
いまどき珍しいくらい世間知らずな田舎の少女ということなのでしょうが棒読みはいけません。
イモな感じは出ていた。
お父さんとの再会シーン、蕎麦屋のシーンは良かった。
帰りに旨い蕎麦を食いたくなった。