老漁師である忠男の孫娘、春のなにげない一言が、思いがけず、忠男にひとつの決断をさせることになる。そして、春との旅ははじまってゆく。親戚を巡る旅。
きっとそれは、忠男にとって、自分自身へのけじめを付ける旅だったのだろう。
しかし春自身にとっても、いつしかそれは、自分自身へのけじめを付ける旅になっていく。
老いた男にとっても、人生これからの孫娘にとっても、自分自身が次のステップに”成長”していく上で、お互いそれぞれにとって大切な旅に違いなかったであろう。厳しいのであるが、それはまた致し方ない。それが人生なのだから。
人生の終演をどうやって迎えられるのか?送り出してあげられるのか?という家族にとっては厳しくとも避けられないテーマについて、丁寧に掘り下げられた良作だと思う。頑固な老漁師を演じる仲代達也さんの演技もさることながら、孫娘、春を演じる徳永えりさんの感情のこもった演技は秀逸。後半にかけてのクライマックスは前半の抑揚をさらに増幅させるかのような感覚で、親の立場・子供の立場、いろんな立場で感情移入できるステキな映画ではないかと思う。
精一杯の愛情で「づっとそばにいるからね」という、春の心境を察すると、あまりにも切なくなってしまう。でも、そうやって経験して人は強くなっていくのだ。