2010-05-01

ビルマとミャンマーの狭間で揺れる微笑の国 このエントリーを含むはてなブックマーク 

 近年は、世界各地で起こる紛争や災害のニュースがたちどころに映像として配信されテレビで観ることが出来る。
その度に、カメラが都合よく事件の瞬間の現場に立ち合わせていることに感心していた。今回、この映画を観てその配信された映像の多くはVJ(ビデオジャーナリスト)達による撮影によるものであることがわかった。

 映画の中で国内外のVJ達は野犬が食べ物の匂いを嗅ぎつけるように反政府デモ勃発前夜のミャンマーの不穏な雰囲気を感じとり各地より集結してくる。
この映画の大部分はそうしたVJ達が撮影した本物の映像が使われている。VJ達の中にはそれにより秘密警察に逮捕され数十年の懲役となる者や消息不明になる方も多数いるとのこと。ことに日本人VJの長井健司さんは軍の銃弾に倒れている。
デモをリードしていた仏教僧の寺院が深夜、軍のトラックで襲われたてこもる僧達は続々と逮捕または、消息不明となる。そのように僧達が姿を消す中、残ったのは学生ら若者達で、政府軍にアパートの屋上まで追い詰められていく様もVJのハンディカムや最後には音声のみで「祈るんだ、祈ったら死ぬのが怖くなくなる!」、「命の惜しくない者は先頭に行ってれ」など既に生きる希望を捨てている悲痛の声を拾っていて最後には、その音源もぷっつりと途中で切れている。

デモの前に「国民は困っている!」とアジテーションする活動家を政府が連行しようとしたとき、そのシーンをカメラに収めようとしたVJ達と活動家の仲間を探るためにカメラで撮影しようとする秘密警察とでカメラを持った者が乱立して誰が誰やらわからなくなっているシーンが印象に残る。

石油価格を2倍にした政府や水害による国民の困窮に決起し托鉢鉢を逆さまに掲げミャンマー軍事政権に対し反政府デモを巻き起こした40万の仏教僧達。
それに対し銃を突きつける下級軍兵士が何度も後ろを振り返り上官の支持を確認する姿や僧達が次々と逮捕連行された後、そのデモを維持する学生達、登場する全ての人達が命懸けだ。
それをつぶさに映像にとり世界に発信し糾弾するVJ達もまた命懸けである。

日本のぬるい環境で暮らす自分にとってこのドキュメントの中の人々の言葉や行動はあまりに重く観終った後はどっと疲れてしまった。それ程の衝撃の映画であった。

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makoto

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makoto

“死ぬには早すぎるけど、やり直すには遅すぎる。”