2010-04-28

幾つもの意外などんでん返し——映画『マイマイ新子と千年の魔法』—— このエントリーを含むはてなブックマーク 

 月曜の夜は、とても評判がよく上映館の多くで大入りが続いているという、『マイマイ新子と千年の魔法』(監督・脚本:片渕須直、原作:高樹のぶ子、アニメーション制作:マッドハウス、声の出演:福田麻由子、水沢奈子、森迫永依他、2009年)を観に、吉祥寺のバウスシアターへ行って来ました。

 http://www.mai-mai.jp/index.html

 九時上映開始なので、その前に行けばいいと思っていたのですが、何と19時半から整理券配布とのこと。わざわざ吉祥寺まで行って、満席で入れないなんていう悲喜劇はイヤなので、六時半に家を出たら早過ぎました…。結局上映まで二時間近く吉祥寺をブラブラすることに…。

 とは言え、昨年十月以来の吉祥寺だったので、古書店をハシゴするだけで十分楽しめました。ロンロンはアトレへと改修工事中だし、サンロードはますますチェーン店ばっかりになっているし…と、高校時代から二十年以上この街が大好きな人間としては、まあいろいろと複雑な感じもしましたが…。

 映画館は八割がたの入り。結局ギリギリに行っても座れないということはなかったようでした。観客は大部分カジュアルな服装の成人男性ばっかり。時間的なこともあって子どもは皆無なので、静かに観れてよかったです。

 で、肝心の映画についてですが…或るところで昭和三十年代へのノスタルジーが人気の一因だなんて言われているのを目にしましたが、『ALWAYS三丁目の夕日』のように、これ見よがしに「古き良き日本」を懐かしむような作品でも、『おもひでぽろぽろ』のような、何と言うか、当時の風俗の忠実な再現で魅せようとするような作品でもありません。少なくともそこに本作の魅力の本質はないと思います。

 子どもが主人公なのですが、単に美しい映像で、天真爛漫で想像力に富んでいた子ども時代や、物語の舞台となる山口県防府市の風物を懐かしむだけでもありません。あこがれの大人の借金を苦にした自殺や不倫の恋の破綻、前近代社会での身分制や貧困といった、人間社会の「闇」にもきちんと触れられています。いやそれどころか、これらの出来事によって被ったショックの克服が、作品の基調の一つを成しています。ここらへん、『世界名作劇場』(『赤毛のアン』等、大好きな作品もありますが)とも違います。

 また、主人公の新子と親友の貴伊子を取り巻く物語と、千年前の貴族の娘・諾子(後の清少納言)のそれが、物語としての一体感や有機的な繋がりを上手に保ちながら、テンポよく切り替えられていくのにも感嘆しました。

 そして、やや謎めいた貴伊子の父が平凡な感じの中年男性だったり、子ども時代の貴伊子の母が新子そっくりだったり、多忙でなかなか家に帰らない新子の父が野性的な大学教師だったりと、物語が終わりに近づくにつれて、幾つかのどんでん返しがあります。しかし何より見事だと思ったのは、東京から来た貴伊子が、田舎での新子達との楽しい思い出を胸に帰京するといったような、容易に発想出来るような形で物語を結ばない点です。

 と言う訳で、前評判を裏切らない良作でした。各地で上映中のようですので、機会があったら是非観に行って下さい。僕はDVD化されたら購入しようと思っています。

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知世(Chise)

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知世(Chise)

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