前回に続き、
今日は、インディペンデント・タイ映画の中のミャンマー。
と、いっても私は、ミャンマーを扱ったインディペンデント映画をそれほど多く知らないのですが。ここでは2本、ご紹介。
一番有名なのはこれ、
『ブリスフリー・ユアーズ』byアピチャッポン・ウィーラセタクン監督。
2002年カンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリ。東京フィルメックス最優秀作品賞。などなど。
すでに日本でも上映されたことがありますし、
今回のタイ映画祭のアピチャッポン特集でも観ることができます。
この作品の面白いところは、
タイ人のミャンマー人像と全く違うところ。
あらすじなどの詳しい話はしませんが、
ミャンマー人の不法移民の若い男性に、
地方のタイ人女性2人は、
惹かれる。
そこには、ミャンマー人への嫌悪や偏見は見られません。
アピチャッポン監督はインタビューで、この作品は監督が前作の撮影中に偶然、動物園で見かけた不法滞在のミャンマー人が警察につれられていくことに着想されたといってます。
それは、バンコクでは決して珍しくない、日常の景色。
果たして警察に連行される前、そのミャンマー人女性は、そこにいた他の人々同様に動物園で楽しい時間を過ごせたのか?
アピチャッポン監督のインタビューのリンク
http://www.secondrundvd.com/release_more_by.php
『ブリスフリー・ユアーズ』に激しい政治的メッセージはないと思いますが、
タイについて知っていると、そこに見えるものがあります。
監督の作品は、その実験性やアート性から国際的に注目されていますが、
その中に隠された(いや、隠されていないか)政治的含意を想像すると、さらに面白いです。
勝手な解釈かもしれないですが(笑)。
他にも、Natthapon Timmuang監督の『Admit』(2007)という短編ドキュメンタリー作品が、同様にタイ国内のミャンマー人労働者を扱っています。
監督はまだ学生ですが、この作品は第11回タイ短編ビデオ映画祭で上映をされた優秀作で、作業中にケガを負ったミャンマー人労働者の入院生活を淡々と撮っています。
その視点はアピチャッポンのそれと近いかもしれません。
こういった監督が、一般的なタイ人のもつミャンマー人像に対抗しているのかといえば、
わからないですが、そこへの疑問というのはなんとなく感じられます。
インディペンデント映画は、
そこにはちゃんと市場があるし、
メジャーを目指す人も多々いるけれど、
完全な商業主義でなく、
インディペンデントだからできることも大きい。
もちろんメインストリームでもメッセージの強い作品もたくさんありますけど。
将来的に、タイ人とミャンマー人の恋愛映画とかできたりしたら面白いんですがね。